BIメールニュースNo.028 2009.12.26発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.028  2009.12.26発行

【1】『捕捉率とベーシック・インカム』             堅田香緒里

【2】BIニュース 第四回ベーシックインカム入門の集い 小沢修司さん講演ご報告

「ベーシック・インカムのある社会を構想する― 実現の可能性は?―」

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】『捕捉率とベーシック・インカム』             堅田香緒里

「捕捉率」とは、生活保護基準以下で暮らす生活困窮者のうち、生活保護を受給している人の割合を指す。この値を通して、給付漏れすなわち「漏給」の程度を知ることができる。日本の場合、現在捕捉率に関する政府の公式統計はない(少なくとも公表されていない)が、研究者による代表的な推定捕捉率はおよそ20%である。つまり、生活保護基準以下で暮らす人のうち20%しか生活保護にアクセスできておらず、残りの80%は生活保護の給付から漏れているのである。この値は、イギリスやフランス等の諸外国における捕捉率が60~70%であることに比して、きわめて低いと言わざるを得ない。

生活保護とは、生活保護基準以下で暮らす人のみを対象とした選別的な仕組みで、複雑怪奇なミーンズテスト(資力調査、受給資格があるかどうか審査すること)によってなされる。そのため常に「正しく」その対象を選別できるとは限らない。こうした「選別の失敗」は、「漏給」(受給資格があるのに支給されないこと)あるいは「濫給」(受給資格がないはずの人に支給すること)として現象する。

近年、貧困が社会問題化する中で、先述の捕捉率が示すような漏給という「選別の失敗」が少しずつ注目されるようになってきたが、生活保護の歴史においては、その「選別の失敗」が現代以上に注目された時期があった。1980年代のことである。

ただしその時、議論されたのは濫給の方である。暴力団の組合員等による生活保護制度の濫用報道をきっかけに、いわゆる「不正受給」が問題化されるようになったのである。このため、生活保護の「適正実施」が要請されミーンズテストがいっそう厳しくなり、これがかえって漏給の増加につながったとも言われる。ともあれ、このような不適切な生活保護給付・濫給は、現在年90億円程度あると言われているが、生活保護全体の給付規模2.6兆円からすると、それほど多いわけではない。それよりはむしろ、80%の生活困窮者が生活保護の給付から漏れていることの方が大問題である。

では、こうした漏給・濫給といった生活保護の「選別の失敗」にどのように対処したらよいだろうか。これにはおよそ2つの方向性があるだろう。一つは、ミーンズテストの精度を高め、生活保護を「適正に実施」していくことであり、もう一つは選別そのものを手放し、すべての人に普遍的に所得を保障することである。

80年代以降日本が採った戦略はむろん前者であり、後者のアイディアはベーシック・インカムの考えに連なるものである。濫給という「選別の失敗」を避けようとするために生活保護の「適正実施」政策を試みたところ、漏給というもう一つの「選別の失敗」を犯してしまったのである。この経験をふまえれば、今後私たちがどちらの戦略を採用すべきかは自ずと明らかになるであろう。

<堅田香緒里 氏 プロフィール>

埼玉県立大学助教。最近の論文「ベーシック・インカムとフェミニスト・シティズンシップ―脱商品化・脱家族化の観点から」『社会福祉学』50巻3号、「ベーシック・インカムをめぐる疑問に答える」『週刊金曜日』741号。

【2】BIニュース 第四回ベーシックインカム入門の集い 小沢修司さん講演ご報告

「ベーシック・インカムのある社会を構想する― 実現の可能性は?―」

先週12月19日に、当会主催の第四回ベーシックインカム入門の集い「ベーシック・インカムのある社会を構想する― 実現の可能性は?―」を開催しました。

日本におけるBIのパイオニアである小沢修司さんの講演ということで、100人を超える参加者が集まり熱気に溢れていました。

その熱気から、続々と報告・感想が集まっています。

日本におけるベーシック・インカム論のパイオニア小沢修司さんの話を聞いてきた 第1部 第2部

http://blogs.itmedia.co.jp/yasusasaki/2009/12/1-348d.html

http://blogs.itmedia.co.jp/yasusasaki/2009/12/2-7dfc.html

第四回ベーシックインカム入門の集い報告

http://mirainet.exblog.jp/11817484/

【ベーシックインカム実現の可能性は?】イケる気がする-公聴レポート-

http://sakamata.blog.so-net.ne.jp/2009-12-21

第4回BI入門の集いに行ってきました。

http://hibikiclub.seesaa.net/article/136161678.html

ベーシック・インカム(BI)のセミナー

http://premaanc.blog52.fc2.com/blog-entry-29.html

また、当日初公開した小冊子『ベーシックインカムがわかる本 Q&A入門編』も、インターネットおよび常備店で販売しています。詳しくは下記からどうぞ。

http://bijp.net/data/article/137

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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