BIメールニュースNo.205  2013.6.8発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.205  2013.6.8発行

【1】『風薫る5月に…』              白崎 朝子

【1】『風薫る5月に…』              白崎 朝子

昨年7月、私はベーシックインカム・実現を探る会の白崎一裕さんや東京の運動仲間と福島原発告訴団・関東事務局を立ち上げた。

そして昨年11月に関東事務局だけで6千人以上の告訴・告発人を集めた。告訴団は全国で14716人の告訴・告発人を抱える歴史上初めての運動体となった。

5月は31日に告訴団の日比谷野音集会があったため、私は一裕さんと頻繁に連絡を取り合った。だが99%が実務の相談に事務連絡…。あまりにも雑務が多すぎ、脱原発とベーシックインカムに関する本質的な議論をする暇もない。予定されていたディスカッション・ミーティングも体調不良と多忙ゆえに延期を余儀なくされた…。

原発被災者の『避難の権利』を保証するため、ベーシックインカムは必要…という論旨で、議論したり取材したり裏付け資料を探す必要を感じる。と同時に被災者に寄り添い、共に生きることの中に、ベーシックインカムが必要な人たちに届く論拠を産み出すエネルギーがあるとも思っている。

なぜ被災者からはベーシックインカムの要求運動が出てこないのか。残念ながら私たちの運動は、まだそこまでの波及力を持っていないからなのだ。福島の被災者と毎日のようにやりとりしていると、ベーシックインカムの説得力の無さを痛感する。そのため私は他の運動を全部なげうち告訴団の運動に駆けずり回ることになる。

だが私は超ハードな告訴団の運動で体感したことは、ベーシックインカム論に反映されていくと思っている。

主に関西中心で議論されてきたベーシックインカム論は、311以降、完全に失速した。それは主だった論客たちが、被災者の深刻さに寄り添う議論ができなかったからだと思う。

5月31日、涼やかな風が吹く晴天の日比谷野外音楽堂。私は福島からバスで駆けつけた人たちに「福島のみなさん、こんにちは~」とマイクで挨拶した。すると福島の人たちが笑顔で拍手してくださったのだ。

福島の問題を忘れさせようとする政治的な圧力。その中で、東京の事務局が福島の人たちを安全に迎えいれるため、熱中症対策に尽力したことを喜んでいただけた。私たちにすれば当たり前のことだったが…。

そして三人のお子さんをもつお母さんが泣きながらスピーチした後、彼女をハグしながら私も泣いた。

告訴団の運動とは、福島の当事者の苦しみを我が苦しみとして抱き締めていく運動なのかもしれない。

いまの怒涛のような日々はベーシックインカムの議論に『血』を通わせるための『入魂』の実践なのかもしれない。

告訴団の運動はベーシックインカムとの関連で取り組んだ訳ではなかった。だが、被災者にとって説得力があるベーシックインカム論に、大いなるヒントを与えてくれるだろうと思うのだ。

白崎朝子(ケアワーカー・福島原発告訴団・関東 事務局長)著書:『介護労働を生きる』『ベーシックインカムとジェンダー』(共著)共に現代書館刊

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