BIメールニュースNo.003  2009.07.04発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.003  2009.07.04発行

1 『ベーシック・インカムは福祉なのか』 関曠野

2 第3回ベーシック・インカム入門の集い 2009年7月12日(日)

3 BIニュース “国会におけるベーシック・インカムの議論”


1 『ベーシック・インカムは福祉なのか』

関 曠野


三月の私の講演を聴いたある人が「ベーシック・インカムには賛成だが、その代わりに社会保障や福祉政策がなくなることを覚悟しなければならない。少し不安だ」と言っていることを知った。これは誤解である。ベーシック・インカム(以下BIと略記)とセーフティ・ネットの構築とを混同しないでほしい。もちろんBIが実現すれば、それに付随する”福祉効果”はあるだろう。例えば母親と子供二人の母子家庭に大人十万子供五万のBIが毎月支給されたなら所得の総計は二十万で、今の生活保護よりずっとましである。しかし病弱で身寄りがなく借家住まいの高齢者の場合にはBIだけでの生活は厳しい。身障者についても同じことが言えるだろう。

BIが実現すると社会保障がなくなるという誤解は、従来BIが福祉国家論の延長で論じられることが多かったためと思われる。「BIがあれば福祉関係の官僚制が要らなくなり、浮いた費用をBIの財源にできる」という議論もあった。しかしBIと福祉は論理的にも別のものである。福祉は弱者のためのものだが、BIは弱者だけでなく全国民に一律無条件に支給される。

BIが正当化される第一の根拠は、産業のオートメ化の進行である。オートメ化のせいで大半の現代人は潜在的失業者になってしまっている。それでも社会が雇用による所得に固執するならば、派遣労働のような不安定雇用やサービス産業での雑用のような展望の開けない雇用を人々に押し付けざるをえない。BIはこうした雇用の袋小路を打開し、薄給でも人道的な意義のある仕事をするとか、アルバイトで収入を補填しながら生き甲斐のある活動に専念するといった生き方を可能にするだろう。転職や離婚も容易になって不幸に耐える人が減る。

BIを正当化する第二の根拠は、銀行信用とは異なるマネーの流れをつくりだす必要性である。銀行は利子をつけて企業に投資の資金を貸す。この銀行に返済すべき利子付き負債に生産設備の減価償却費や他の企業への支払い、研究開発費などを加えたものが企業の生産費用になる。その中では勤労者への賃金給与は僅かな部分を占めるにすぎない。だから雇用による所得に固執しているかぎり、勤労者の所得(購買力)では生産された商品の一部しか買えない。この生産と消費のギャップゆえに企業は過剰生産に苦しみ、さらに庶民の所得不足は恐慌の原因になる。そしてこの生産と消費の不均衡を解消するためには、BIで庶民の所得を補強することが必要なのである。

〈関 曠野 氏 プロフィール〉(第一土曜日執筆)

1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日ベーシックインカム・実現を探る会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。

http://bijp.net/sc/article/27


2 7月12日(日)第3回ベーシック・インカム(基礎所得保証)入門の集い

ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換


第3回 ベーシック・インカム(基礎所得保証)入門の集い

ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換

◇今回は、教育無償化案などの公共経済にも詳しい教育

研究家の古山明男さんをお招きし、ベーシック・インカムからみえてくる教育と労働の近未来について語っていただきます。

日時  2009 年7 月12 日(日)

14:00 ~ 15:40 主催者挨拶/古山明男さんのお話

15:55 ~ 17:40ごろまで。 質問・意見交換

場所  青山学院大学青山キャンパス

第14 号館( 総研ビル)11 階 第19 会議室

(東京都渋谷区渋谷4-4-25)

参加費     1,000 円( 資料代,お茶代含む)

申込先     フォーラム・スリー

tel.03-5287-4770 /fax.4771

E-Mail info@bijp.net

詳細は   http://bijp.net/newsinfo/article/26

~~主 催~~   ベーシックインカム・実現を探る会


3 BIニュース

“各政党のベーシック・インカムへの姿勢”


ベーシック・インカムについて、国会ではどのように議論されているのでしょうか。インターネットで調査しましたので、現時点のデータを整理してお送りします。

161 参議院本会議 3号 平成16年(2004年)10月15日

朝日俊弘参議院議員(民主党)が小泉純一郎総理に対して

社会保障制度改革に向けてのもう一つの重要な概念は、ベーシック・インカムという考え方であります。この考え方は、国がすべての個人に対して最低限の所得保障を原則無条件に支給する仕組みを構築することを意味しております。

ちなみに、このベーシック・インカムという概念は、近年、ヨーロッパを中心に大きな関心を呼んでいる考え方で、社会保障給付のうちの現金給付部分をすべてこれに置き換えて、その財源は勤労所得への比例課税並びに所得控除の廃止に求める新たな構想として我が国に紹介されており、従来の公的扶助でも社会保険給付でもない、国民のだれもが社会に参加し活動するための基本手当とでも言うべき考え方であります。

こうしたベーシック・インカムという考え方を視野に入れて今後の社会保障制度改革を構想していくか否か、これは大きなポイントの一つだと思います。このような視点について、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

161 参議院厚生労働委員会 5号 平成16年(2004年)11月16日

故山本孝史参議院議員(民主党)が尾辻秀久厚生労働大臣に対して

これは、参議院本会議で我が党の朝日議員が総理大臣に対して、国がすべての個人に対して最低限の所得保障を原則無条件に支給するベーシック・インカムという考え方を御紹介したのに対して、総理は、そうした仕組みは聞いているが、我が国の社会保障制度は、基本は自助と自律であります、この自ら助ける精神と自ら律する精神、これだけでは不十分である、これだけではどうしても立ち行かない人に対しては公的な扶助、あるいはともに助け合う共助、これを組み合わせて個人の責任、そして自助努力を促しておき、この対応の難しいリスクに対しては社会全体で支え合う制度が必要だと思っております、こういうふうに答弁をされました。

162 参議院予算委員会 13号 平成17年(2005年)03月17日

尾辻秀久厚生労働大臣と、故山本孝史議員との討論

故山本議員

大臣、聞いていただけました。だから、考え方が変わったんです。だから、幾らもらうからどこまで賄えるかという話ではなくって、負担できる範囲内で考えたら給付はこれになりましたという考え方だから、基礎年金という表現からは大分離れてきているということを認識してください。変わったんですよ、だから基礎年金という考え方は。

尾辻大臣

経緯については申し上げたとおりでございます。ですから、先生方が言われる税方式でベーシックインカムだとかというような、そういう考え方からすると、またちょっと違うんだなと思うんですけれども……

故山本議員

だから、政府は考え方を変えたんですと言わなきゃ。考え方が違うわけじゃないんだから。

参考:故山本孝史参議院議員に送られた追悼演説(2008年1月23日)

尾辻氏「最も手ごわい政策論争の相手だった」

上記参議院厚生労働委員会5号での議論を追想して

http://www.youtube.com/watch?v=SCbhuhos0xA

http://www.youtube.com/watch?v=Xg3dANg_RfM&NR=1

★故山本議員の提案の後、衆院選で自民党が圧勝したせいか、平成20年(2008年)に至るまで、ベーシック・インカムの発言がありませんでしたが、その後、6件発言がなされており、ついに衆議院でも発言されるほどになりました。詳しくは次号で報告します。

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