BIメールニュースNo.018  2009.10.17発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.018  2009.10.17発行

【1】『リアルな認識からベーシックインカムへ』 白崎朝子

【2】新政府税調が初会合 給付付き税額控除など協議

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】『リアルな認識からベーシックインカムへ』

介護福祉士・ライター 白崎朝子

東京都庁が街を見下ろす新宿は、夜になると街全体が野宿者の寝床と化す。野宿者たちは段ボールや毛布のみで寝ている事が多い。

早春、高田馬場の公園は仕事にあぶれた野宿者で溢れていた。剥き出しで寝ている野宿者に猫が寄り添い温めている。春の宵に跳ねている猫を見て「あの子たちは2歳だよ」と高齢の野宿者が言った。2歳には見えない痩せた猫。と同時に、その男性が同じ場所で2年以上も野宿しているのだと理解した。

真夏、九州から仕事を求めて東京にきたという40代男性に会った。「3万あれば派遣で働けるのに…」給料日までの生活費が無く派遣会社に登録すらできず、路上生活を余儀なくされていた。彼の顔色の悪さに「路上に長くいたら体を壊し働けなくなりますよ。早く福祉につながってください」と言って支援団体のチラシとおにぎりを余分に渡した。以後、彼には会えていない。

肌寒い秋半ばに出会った派遣切りされた30歳の男性。生活保護で入所した宿泊所は劣悪で「10日前に逃げだしたんです」と言う。手配師から斡旋された仕事も過酷過ぎ続かなかった。頬がこけていた彼に「支援者と一緒にもう一回福祉事務所に行ってください。けして諦めないで…」そう言っておにぎりを渡した。「たった一個のおにぎりが命を救う時もあるんです」そう言って涙ぐんだ元野宿者の言葉が耳をよぎる。

数年前、大雪の翌日に凍死者が出た。私はゆで卵百個を担いで新宿に駆けつけた。魂も凍えるような痛みに号泣し、無我夢中で卵をゆでた。今年の冬も結核の高齢者が雨の中、野晒しになっていた。

「派遣切り」以降、都内の支援団体が実施する炊き出しに並ぶ野宿者が倍増している。行政により中止を余儀なくされた池袋の炊き出しには9月11日622人が炊き出しを待っていた。生活保護以下の収入でも、受給に至るのは約2割。野宿者には母子・父子世帯や養護施設出身者が多い。ひとり親世帯の貧困が、野宿者を大量に生み出し、路上死という構造的な「虐殺」がまかり通っている。その現状に私は強い怒りを持っている。

そんな私が数年前、BIに出会った。生活保護受給のハードルが高く、スティグマの強い日本において、BIは多いに議論されるべきだと思う。だがBIが無くても生きていけるアカデミズムの人々の議論のネタにはされたくない。私を含む、貧しさにあえぐ当事者が、実存的な観点から議論できる場を創造していきたい。

<白崎朝子氏 プロフィール>

2002年から野宿者「支援」に関わる。『介護労働を生きる 公務員ヘルパーから派遣ヘルパーの22年』現代書館刊『公園での炊き出しまで中止に』週刊金曜日09年10月2日号

【2】BIニュース

新政府税調が初会合 給付付き税額控除など協議

10月8日に、鳩山由紀夫政権で税制について協議する新しい政府税制調査会(首相

の諮問機関)の初会合が開かれました。日経新聞は1面のトップ記事でこの調査会を

報じ、給付付税額控除についても強調していました。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091008AT3S0701M07102009.html

諮問文の中では「現行税制は複雑かつ不透明で、国民の不信感が高まっている」

と指摘した上で、

(1)暫定税率廃止など政権公約に掲げた項目の詳細

(2)租特見直しと「納税者番号」制度をはじめとする納税環境整備

(3)給付付き税額控除のあり方

(4)エネルギーや酒、たばこなど間接諸税の課税のあり方-

など7項目の検討項目を挙げました。

給付付き税額控除は民主党が「格差の固定化」を防ぐ措置として民主党政策集INDEX2009に掲げた施策です。高所得者には税額の控除を、低所得者には現金の給付を実施します。

貧困対策のほか、少子化対策の一環としても有効とされ、欧米などでは一定の効果を上げていて、アメリカ、イギリス、韓国などで実施されています。政府は、納税者の所得を把握する納税者番号制度と一体で将来的な導入を目指す考えのようです。

http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200910090090a.nwc

民主党政策集INDEX2009

http://www.dpj.or.jp/news/files/INDEX2009.pdf

従来から反発の根強い納税者番号制度は、効率良く個人の所得を把握することができる一方で、政府と有権者の間の信頼関係がないと不安を招きます。北欧のように、有権者が政府を信頼している国では、住民登録番号を税務にも活用しています。

給付付き税額控除はベーシック・インカムに至る橋頭堡となりえます。政府と有権者は、効率の良い税制を作るためには、この件に関して十分なコミュニケーションと議論を行う必要があるのではないでしょうか。

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