BIメールニュースNo.060 2010.8.14発行
【1】『BI論議に対する懸念~公共通貨によるBIを見据えて』 岩田 渉
【2】BIニュース
東京財団による「給付付き税額控除 具体案の提言」と、厚生労働省研究班による給付付き税額控除の提言
IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII
私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。
IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII
【1】『BI論議に対する懸念~公共通貨によるBIを見据えて』 岩田 渉
BIの導入は、社会構造的に生み出される様々な問題を解決するものとして期待/検討されているが、実のところ税方式によるBI論からは、問題を解決するのではなく、問題そのものに手がつけられることはないということがわかる。傷口を塞ぐこと無く、輸血を続ければ、傷口は消え去るのだと念じているようにも見えるし、傷口が表面に浮かび上がることなく、更に悪化する可能性すら感じられる。また、徴税と再分配によるBIからは、消費という行為の搾取、格差の永続化、持てるものによる持たざるものの支配、全体的な家内奴隷制化といったヴィジョンを見て取る。
税方式によるBIは、様々な問題を抱えた社会構造を維持することで利を得るものにとっては好条件ですらある。現在、色々な税がBIの財源として考えられているが、主要なものは所得税と消費税といっていいだろう。例えば仮に、ひと月に1人/10万円のBIが所得税/消費税一律50%といった徴税をもって行なわれたとしよう。しかし生産された富の分配を妨げている、現行の通貨制度が民主化されえないのならば、量的緩和の名の元、配布されたBI10万円の実質的価値を5万、3万、2万と引き下げることは容易である。そしてインフレに応じて給与が即刻引き上げられることがないことからも、BIがそうした条件に応じてすぐさま引き上げられるとは考えにくい。
しかしそれでもなお、一律50%という税率で徴税はされ続けることとなる。言い換えれば、マネーによる交換によって成り立つ現在の我々の生活/生命は、より直接的に通貨制度/銀行制度に結びつけられることとなり、それはあたかも、生殺与奪の権利をそれらに与えるかのようなものである。(字数の関係上、銀行制度/通貨制度問題の詳察は省く。ベーシックインカム・実現を探る会のHPにある関曠野氏の講演録を参照されたし)。
関曠野氏講演録
http://bijp.net/transcript/article/27
こうして税方式によるBIの問題点を見ていくことでも、前向きな可能性を持ったBIとは、交換媒体/社会インフラとして民主的に発行される公共通貨によるBIであることが理解されるだろう。そして地域主権の構築に組み入れられるならば、その力は存分なく発揮され、同時に過度な中央集権化に対する懸念も払拭される。
BIの導入を進めるためには、同時に通貨制度/銀行制度の問題を周知する必要がある。通貨制度の民主化、そしてBIの配布は、民主主義社会の再構築のなかに位置づけられなければならず、それは、経済システムの中に社会が埋め込まれている現状から、社会の中に経済を埋め込むという発想の転換が必要とされるということでもある。
岩田渉 音楽家/画家
BI関連翻訳
戦争の諸原因
by C.H.ダグラス
http://wtr000.blogspot.com/2010/03/blog-post.html
C.H.ダグラスの経済学とルドルフ・シュタイナーの経済学の関連について
オーウェン・バーフィールド著
http://wtr000.blogspot.com/2010/05/ch.html
【3】BIニュース
東京財団による「給付付き税額控除 具体案の提言」と、厚生労働省研究班による給付付き税額控除の提言
東京財団が、ベーシック・インカムの一類型とされる給付付き税額控除について、詳細な提言書をまとめました。
http://www.tkfd.or.jp/admin/files/2010-07.pdf
これを取りまとめた森信茂樹さんは給付付き税額控除の大家で、下記の著書の編著もしています。
『給付つき税額控除―日本型児童税額控除の提言』
リフレ派議員にして、給付付き税額控除の推進で鳴らし、ツイッターでも人気を博する民主党の金子洋一議員も、上記の著書の執筆に名を連ねています。
http://blog.guts-kaneko.com/2008/11/post_424.php
金子洋一議員のツイッター
また、『子どもの貧困』で著名な阿部彩さんが代表を務める厚生労働省研究班は、低所得者に限定した給付付き税額控除が貧困解消に効果的だとした上で、必要な予算額も試算しています。
ワーキングプアは641万人=給付付き税額控除提言-厚労省研究班が初の推計
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201008/2010080100087
IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII
○BIメールニュースは、ベーシックインカム・実現を探る会の活動情報などをお届けする無料のメールニュースです。まぐまぐで直接購読を申し込まれた方にお送りしています。
○登録・配信停止・アドレス変更はまぐまぐにてお手続きください。
○転載は大歓迎ですが、「ベーシックインカム・実現を探る会 BIメールニュースno.xxx」のようにクレジットを御記載ください。また 宛てに転載の旨、ご一報いただければ幸いです。
○みなさんのご意見をお待ちしています(800字以内でお願いします)。
不掲載をご希望の場合は、必ずその旨を明記して下さい。また、氏名、肩書きは、特にご指示がなければそのまま掲載します。イニシャル、匿名、ハンドルネーム使用の場合は必ず明記して下さい。なお、盗作、名誉毀損、人権侵害、差別的な記述などの投稿は、禁止いたします。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
Copyright(C)2009-ベーシックインカム・実現を探る会-All rights reserved.
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※