BIメールニュースNo.114  2011.9.10発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.114  2011.9.10発行

【1】ケアとベーシックインカム(第二回)          ベーシックインカム・実現を探る会代表  白崎 一裕

【2】関曠野さん講演会3・11以後~~原発事故をくぐった日本の将来を考える

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】ケアとベーシックインカム(第二回)          ベーシックインカム・実現を探る会代表  白崎 一裕

前回のメルマガでは、「市場から調達されない依存労働(ケア労働)を支えるためには、なんらかの所得保証(ベーシックインカム)が必要」と書いた。この部分を再考してみると、私は、所得保証(ベーシックインカム)とケア労働は、社会に対して同じ機能・構造を有していると考えて両者をむすびつけていることが分かった。所得保証もケア労働も通常よく見られる議論は、福祉国家の充実ないし延長としてのものだ。しかし、私はその立場をとらない。ベーシックインカムは、なぜ、必要とされるのか?それは、資本主義の不安定性と市場経済のゆがみを取り除くためである。

資本主義の不安定性の克服の議論は、『奴隷の国家』(ヒレア・ベロック、関曠野訳・解説)による。まず真に自由主義的な社会にのみ資本主義が発生する。そこでは、法的政治的に権利が保障された市民が存在する社会でありながら、その社会は、生産手段に関して少数の所有者と大多数の非所有者に分裂して不安定になる。法的には自由なはずなのに、実際は「奴隷」という矛盾と欺瞞。この不安定さを克服するには、三つの解決策がある。1、誰も財産を持たない社会主義。2、できるだけ多くの市民が財産をもつ分配主義。3、少数の所有者の特権を維持したまま大衆に強制労働の代償に最低限の生活を保障する奴隷制。である(ここまでは、関曠野の解説からの要約)。いうまでもないが、この2がベーシックインカムのある社会のことで、1の「社会主義」3の「福祉国家」および少数の特権維持ということに特化すれば「新自由主義国家」という出口なしの選択とは違う有効な選択であることは明白である。

また、このベロックの論理にC・H・ダグラスの「信用の管理の民主化(銀行マネーの民主化)」ということを加えれば、政府通貨と国民配当(ベーシックインカム)ということになり、生産と消費の安定的なバランスをもたらすことになる。いずれの場合も、ベーシックインカムの目的は、資本主義および市場経済の不安定さと矛盾を克服し社会を安定的に継続させていくための道具としてのベーシックインカムを提案することになるのだ。これと同じことがケア労働にも言える。一般的に自由で自立した理性的存在として個人はあると思っているが、その自由や理性はどこからきたのか?「誰もがお母さんの子ども」(キテイ)。この言葉は、性差別的に「母」をもちだしているわけではない。誰もが一方的に依存する存在としてケアされながら育まれる過程で、自由で自立した理性的存在となるのだということを示している。充実したケア労働がなければ、社会が安定的に存続することが難しくなる。ベーシックインカムとケア労働は、社会を安定的に存続するための車の両輪のような関係であるといえないだろうか。ベロックの論理によれば、個人個人の所有権(所得保証)のないところに自由はないということになるが、これにケアする権利と義務そしてケアされる権利ということが加えられて、真の自由が生じてくるといえよう。(この項続く)

<白崎一裕 氏 プロフィール>ベーシックインカム・実現を探る会 代表。「とちぎ教科書裁判通信」

http://kazuhihi.blog39.fc2.com/

BS11動画映像 田中康夫 vs 白崎一裕 対談

http://bijp.net/data/article/182

12分レクチャー:白崎一裕「ベーシックインカムまるわかり」

http://bijp.net/data/article/145

【2】関曠野さん講演会3・11以後~~原発事故をくぐった日本の将来を考える

「戦前の日本帝国はヒロシマで終わり、戦後の日本株式会社はフクシマで終わった」(関曠野「図書新聞」3011号より)

  1. 11は、私たちに何をもたらし、私たちはどこへ向かえばよいのか。グローバルな歴史的視野で3・11以後を考える思想史家関曠野さんの講演会です。

    9月24日(土) 午後6時~8時終了予定(開場午後5時30分より)会場:調布市文化会館たづくり8F映像シアター(京王線調布駅南口徒歩3分)

    http://www.chofu-culture-community.org/forms/menutop/menutop.aspx?menu_id=723

入場、無料定員:申込み順100名

お話 関曠野さん   プロフィール1944年生まれ。評論家(思想史)。共同通信記者を経て、1980年より在野の思想史研究家として文筆活動に入る。思想史全般の根底的な読み直しから、幅広い分野へ向けてアクチュアルな発言を続けている。著書に『プラトンと資本主義』、『ハムレットの方へ』(以上、北斗出版)、『野蛮としてのイエ社会』(御茶の水書房)、『歴史の学び方について』(窓社)、『みんなのための教育改革』(太郎次郎社)、『民族とは何か』(講談社現代新書)などがある。また訳書に『奴隷の国家』ヒレア・べロック(太田出版)がある。現在、ルソー論(『ジャン=ジャックのための弁明 ― ルソーと近代世界』)を執筆中。

  • 主催調布市西部公民館  〒182-0035 調布市上石原3-21-6

※講演の中で、通貨改革や所得保証にもふれる内容となります

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