BIメールニュースNo.125 2011.12.10発行
【1】あやしい「給付付き税額控除」導入の動き
【2】給付付き税額控除関連資料
【1】あやしい「給付付き税額控除」導入の動き
ベーシックインカム・実現を探る会 代表 白崎一裕
最近の報道によると、古川元久経済財政担当相は12月2日の記者会見で、消費税を増税した際の低所得者対策として有力視される給付付き税額控除について、「2010年代半ばに税率10%にする際には間に合わせたい」と発言して導入を進めるという。
給付付き税額控除は、所得税額から一定額を控除するほか、納税額が少なくて控除しきれない人や低所得者で所得税を納めていない人には政府が給付金を支給するというものだ。
この制度をベーシックインカムの導入の前段階として評価する意見もある。私も、ベーシックインカムの説明をする際に、上記のような肯定的な評価をしてきた時期があった。しかし、今回の古川大臣の発表を聞いて、その評価は全く!間違っていたと反省している。そして、これは考えようによってはベーシックインカム導入自体が、「悪巧み」に利用されるという危険性を示しているということなのだ。
この給付付き税額控除のねらいは、消費税増税に対する批判をやわらげるためといえよう。
また、低所得者への負担のしわ寄せへの軽減ということもあるだろう。しかし、これは、まったくの的外れな、また財務省の浅知恵ともいうべき政策だと思う。
まず、デフレ経済の上に3・11震災後というこの時期に増税はいかがなものか?という根本的な疑問がある。そして、震災がなくてもすでに2009年の調査で、給与所得者年収200万円以下が296万人増加し、年収300万円~2000万円以下の階層が激減していることが判明していたのだ。このような中間層の貧困化がすすむなかで「消費税増税」がいかなる負担をもたらすのか?という懸念がある。この不透明な政策に対して「交換条件で、給付金を渡すから増税をがまんしなさい~」とでもいうような不当取引に所得保証制度が利用されている気がするのだ。ご存知のように、ベーシックインカムというのは「個人単位・無条件」の所得保証なのだ。そうであるならば、その導入も「無条件」ということにしてもらいたい。財政的な取引のために「所得保証」が利用されてはならないのだ。この「取引」を証明するような大臣の発言がある。古川氏は「(消費税値上げ第1弾では)税の世界ではなく、社会保障分野全体で見ていく」と言い、社会保障給付の上積みで低所得者の負担を軽減し生活保護費や子供向け手当などの増額を検討するという。このことは、何を意味しているのか。
給付付き税額控除は消費税増税第一弾では納税共通番号制が間に合わないので、とりあえず、現行の生活保護費などの増額で乗り切るということだ。しかし、裏をかえせば、給付付き税額控除が導入後には、生活保護費などが切り下げられる可能性がでてくる。政府は、「税と社会保障の一体改革」ということで「持続可能な社会保障のために」などというもっともらしいお題目を言っているが、平たくいえば、これは「増税と緊縮財政」をしますよ、ということではないか。
所得保証制度(ベーシックインカム)は、現在の福祉制度の枠内で考えている限り、きわめて反動的な政策となってしまう。あくまでも、万人の所得保証は、社会保障・福祉制度の「外部の」制度であって、所得保証制度の上部に各種社会保障制度が構築されなければならない。
そして、そのためには、この国家財政の貧困・矛盾などの根本原因である「利子つき負債経済」からの脱却(通貨改革)が必要なのだ。「通貨改革なくてしてベーシックインカムなし」ということを頭と心にたたきこんでおきたい。
<白崎一裕 氏 プロフィール>ベーシックインカム・実現を探る会 代表。
【2】給付付き税額控除関連資料
給付付き税額控除、消費税10%までに導入 古川経財相が会見で
上記の白崎氏のコラム、そして上記のニュースのように、給付付き税額控除に向けた動きが本格化しています。そこで、給付付き税額控除に関する資料をまとめてみました。参考にしてみてください。
ベーシックインカムメールニュース編集長の取材メモ : 給付付き税額控除関連資料
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