BIメールニュースNo.135 2012.2.18発行
【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(2) 鈴木武志
【2】橋下徹大阪市長がベーシックインカムを検討と「船中八策」で表明
【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(2) 鈴木武志
~低賃金労働者への所得保障~
いわゆる「ワーキングプア」には、就労している限り何らの現金給付もない。非正規雇用の割合がますます増加することが考えられるなかで、育児・住居などの「現物」支給の拡充と並行した所得保障も必要ではないか(社会保険の適用も)。消費増税に伴う低所得者への補償策として、所得税における税額控除による給付が予定されている。このような措置を徐々に拡大して(対象と額)いけば、実質的にUBIの導入に近づくものではないか。
これに対してBI論者は、「消費増税と引き換えだから」などと言って批判・無視するのではなく、具体的内容をチェックし、低所得者により役立つものへと注文を付けていくこと、対象となる所得階層を徐々に引き上げて対象者を増やす運動も必要ではないだろうか。
~「子ども手当」~
民主党マニフェストの目玉だった「こども手当」は、その無条件性においてベーシックインカムの理念に通ずるものだったが、野党の批判に屈して水準を落とし、親の所得による制限が導入されるのは残念だ。これにしても、ある程度の所得制限付きでも、額を引き上げていくことで、子どもあり世帯の所得保障として有意義であり、UBIへの入り口となっていくのではなかろうか。
~新卒者・若者の非正規雇用への参加の抑制、若者の人生模索期間の保証~
新卒者の就職難は深刻である。企業は大学までの教育を信頼しておらず、入社後の研修とキャリアプログラムで「使い者」に育てていくので、派遣などの非正規雇用の場合や、新卒で入社しない場合は、このキャリアプログラムから外れる可能性が高く、それは生涯賃金に影響する。
「人生で何をやっていくか」と模索するのも、若者のいわば「特権」であろう。もう一度学ぶも良し、放浪するも良し、売れないことを承知での芸術の創作もまた良しである。彼らに「模索」の経済的条件を保障することは、型にはまらない、創造的で個性豊かな将来の日本人を生み出していく意味でも、彼らへのベーシックインカム支給は有効である。
ベーシックインカムとまでは言わないまでも、高校あるいは大学卒業からの一定期間の定期的な生活サポート金支給、あるいは、人生スタートへの「支度金」としての一時金の支給を考えるべきでではないか。
このような支援によって、若者がやむなく非正規雇用に追い込まれていくのを防ぐことができるのではなかろうか。後者は、かつてトーマス・ペインなどが提唱したアイディアで、最近ではブルース・アッカーマンらが現代版を提案している(P.V.パリース『万人のためのベーシックインカム』参照)。この一時金は、何に使っても良い(学費にでも、放浪にでも、ギャンブルにでも)。活かすも殺すも本人次第である。
鈴木武志
1945年、宮城県気仙沼市生まれ。東京都立大学人文学部中退。学生時代から生協の活動に関わり、大学生協連、コープとうきょう、日本生協連などを経て、リタイア。
【2】橋下徹大阪市長がベーシックインカムと負の所得税を検討と表明
大阪維新の会が、次期衆院選の公約として策定を進めている「維新版・船中八策」の骨子が13日、判明しました。その中に、ベーシックインカムと負の所得税がセットで導入されると報道されています。
「維新版・船中八策」の詳細は今月末に分かるということもありますので、下記情報の他に詳しい情報が分かる来週号で、ベーシックインカム・実現を探る会代表の白崎一裕氏と、当メールニュース編集長の野末雅寛が、この「維新版・船中八策」とベーシックインカムについて論評いたします。
維新版「船中八策」 最低生活保障導入を検討 改憲・教育改革を柱に
橋下徹×茂木健一郎: ベーシック・インカム 2012/02/15
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