BIニュース Vol.3 2009/5/30号

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前々回、経済財政諮問会議で「給付付き税額控除」が提言されたことをご紹介しましたが、今回は財源論にまで踏み込んで数値明記されました。ところが、2015年の費用想定と遅いペースで、そこに民主党を含む野党がつけ入る隙があります。
与党の公明党がその立党精神に基づいて、意外にもこのテーマに熱心なので、各政党間でベーシック・インカム的な政策を推進する競争をすることが望まれます。最後に、各政党のベーシック・インカム的な政策への意欲度を検索して、ランク付けしてみましたので、どうぞご参考になってください。

経財諮問会議が試算 安心保障に最大7・6兆円

http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200905300097a.nwc

政府の経済財政諮問会議(議長・麻生太郎首相)が29日開かれ、民間議員は、雇用や生活の不安を解消し「安心と活力が両立する社会の実現」に向けた施策に最大7兆6000億円規模の費用が必要になるとの試算を提示した。政府が6月にまとめる政策指針「骨太の方針2009」は社会保障分野の支援拡充が焦点の一つとなる見通し。提言は、新たな支出と消費税率引き上げなどの財源を一体的に議論することを求めた。

試算は、安心保障政策の候補となっている主な施策に関し、2015年度の費用想定として給付付き税額控除に1兆~4兆円、幼児教育費の軽減・全額助成で2000億~8000億円、就労支援付き生活保障が1000億~3000億円の規模になると試算。

これら施策で1兆7500億円~7兆6000億円規模の税や保険料による財源確保が必要であることを強調した。消費税1%分の収入は09年度税収見込みベースで約2兆5000億円。7兆6000億円を消費税で賄う場合は約3%分の増税が必要になる。

また、施策の原則として「サービス・給付とその財源は常に同時かつ一体的に検討し実行されなければならない」と指摘。消費税増税などの税制抜本改革や歳出削減で財源を確保し制度を立案するよう求めた。施策の立案段階で「費用試算を公表するのは珍しい」(政府関係者)という。

「非正規」支援拡充を 安心会議提言素案 低所得者給付も

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/168181.html

政府の安心社会実現会議が二十八日、首相官邸で開かれ、成田豊座長(電通最高顧問)が、非正規労働者への雇用保険、厚生年金、健康保険の適用拡大などを柱とする報告書素案を示した。これをたたき台に六月中旬に報告書をまとめる。

素案は、安心社会の前提条件として、非正規労働者や低所得者などの現役世代を含めた「切れ目のない生活安全保障が不可欠」と提起し、「雇用」「子育て」「教育」「医療」「介護」の五分野の改革が必要と強調した。

具体策としてはほかに、所得税減税の恩恵が受けられない低所得世帯などを対象とした給付付き税額控除の導入、地域医療の救急体制の整備、高齢者向けに医療・介護サービスを提供する住居の提供-などを挙げた。

これらの提言に対し、麻生太郎首相は「実現のために財源を(報告書に)書き込んでいくことが必要だ」と述べ、裏付けとなる財源の確保を検討するよう要請した。

両記事への見解

施策の立案段階で「費用試算を公表するのは珍しい」とのことで、政府の意気込みが垣間見えます。 給付付き税額控除に1兆~4兆円は、ベーシック・インカムが月数万円レベルで実現されたら100兆円を超えるのと比べれば小さな規模ですが、一歩前進したとも言えます。しかし、2015年度の費用想定というのは、この金融恐慌期においては、あまりにものんびりとしていないでしょうか。

かねてから民主党は、「給付付き税額控除」の実現を訴えていたわけですから、「パクられた」と嘆きたくなるところでしょうが、ここに差別化のポイントがあります。「来年度からの給付付き税額控除実現」を訴えれば、与党とは明確に差別化することができますし、衆院選の勝利後に連立を組むことが想定される新党日本はベーシック・インカムをマニフェストに掲げる可能性が高いわけですから、両党は連携して、一層のベーシック・インカム推進に注力していただきたいです。

民主党税制抜本改革アクションプログラム(2008/12/24)

http://www.dpj.or.jp/news/?num=14851

給付付き税額控除の言及箇所は、「3.各税目における改革指針」を参照

各政党の「給付付き税額控除」への言及

各党の連携を考える前に、実際各党は「給付付き税額控除」についてどのように考えているのか調査しました。

与党では、自民党のホームページで「給付付き税額控除」を検索しても1件もヒットしなかったのに対して、公明党のホームページでは14件もヒットしましたし、これは民主党と社民党のヒット件数(4件)をも上回ります。

  • 公明党のホームページでの「給付付き税額控除」検索結果 14件
http://www.yahoo-search.jp/?ord=s&id=300333&kw=%B5%EB%C9%D5%C9%D5%A4%AD%C0%C7%B3%DB%B9%B5%BD%FC
  • 民主党のホームページでの「給付付き税額控除」検索結果 4件
http://www.dpj.or.jp/news/?search=%8B%8B%95t%95t%82%AB%90%C5%8Az%8DT%8F%9C
  • 社民党のホームページでの「給付付き税額控除」検索結果 4件
http://www.google.com/search?as_sitesearch=www5.sdp.or.jp&ie=Shift_JIS&oe=Shift_JIS&q=%8B%8B%95t%95t%82%AB%90%C5%8Az%8DT%8F%9C&btnG=%8C%9F%8D%F5

定額給付金にしても、公明党の働きかけで実現した側面が強いわけですし、事実、定額給付金の正当性を「給付付き税額控除」に求めている発言が数多くありますし、「生命・生活・生存」を尊重する公明党の理念にマッチしています。

庶民、中小企業守る先頭に

http://www.komei.or.jp/news/2008/1226/13367.html

定額給付金

財政政策からいっても、世界はこぞって減税や公共事業など大規模な財政出動をしている。日本でも実体経済に影響が出ている。輸出の減退と株下落に伴う逆資産効果の二つをどう乗り越えていくか。庶民の消費を下支えするために私たちは定額減税を主張したが、その考え方が非常に重要になっている。

給付を付けた税額控除は米国やフランス、ドイツ、イギリス、カナダなど世界各国で行われている。給付付き税額控除という思想のもとで、ますます重要な役割を果たすのが今回の定額給付金だ。減税の恩恵に預からない生活の大変な方々を支援し、さらに景気や消費を下支えする極めて重要な政策だ。

民主党は“低所得者ほど使わず経済効果もない”などと批判しているが、生活現場の実態を分かっていない。中低所得者の生活は本当に大変で、定額給付金が使われることは間違いない。

かんたんに「給付付き税額控除」およびベーシック・インカムへの熱意の順番で、各政党を序列化すると、以下のように整理できます。

  1. 新党日本
  2. 公明党
  3. 民主党
  4. 社民党
  5. 自民党

自民党は、党としての熱意はありませんが、政府としては導入の意志が見られるため、末席に入れました。その他の政党は、現時点では「給付付き税額控除」およびベーシック・インカムを導入する意志が見られません。

一方、個々人の政治家を見ると実情は多種多様で、ベーシック・インカムについても深い関心を持つ議員がいます。次回のBIニュースでは、その点を取り上げます。