BIメールニュースNo.012  2009.09.05発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.012  2009.09.05発行

お知らせ 古山明男さんの講演録第1部を公開しました

1 『大恐慌の教訓 (下)』          関 曠野(第一土曜日執筆)

2 シンポジウム

『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか

:ロナルド・ドーア先生を囲んで』

3 BIニュース “ベーシック・インカムを公約に掲げた党・候補者の当落状況”

私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。


お知らせ 古山明男さんの講演録第1部を公開しました


7月12日に行われた古山明男さんの講演録「ベーシック・インカムのある社会」― 労働と教育の根本的転換 ―の第1部を公開しました。

http://bijp.net/transcript/article/91

講演の内容自体もマクロ経済について具体的に分かりやすいのですが、それだけでなく図版も多く、ビジュアルに理解しやすいものとなっています。ぜひ、BI議論のプラットホームにご利用ください。追って、公共通貨「e¥」(イー・円)を論じた第二部も公開いたします。しばらくお待ちください。


1『大恐慌の教訓 (下)』

関 曠野(第一土曜日執筆)


前に述べたように、1930年代のアメリカのニューディールは恐慌対策としては基本的に失敗だった。しかし今日でもニューディールを実態以上に美化して評価する論者は少なくない。そうした論者は視野がアメリカに偏っているために歴史的に重要な事実を見落としている。30年代の恐慌では、アメリカとは対照的に日本とドイツはその解決に成功しているのである。日独を悪の権化とする戦時中の連合国のプロパガンダの後遺症で、この事実は無視され忘れられてきた。そしてこの日独の成功は軍国主義やナチズムには関係のない事柄である。

日本では高橋是清が国債の日銀引受けの形で政府通貨を発行し、それによって日本はいち早く恐慌から脱却できた。ドイツでは国立銀行総裁のヒャルマール・シャハトが労働財務証書の形でやはり政府通貨を発行し、その結果金も外貨準備も乏しい中で世界恐慌に直撃されたドイツを三年間でヨーロッパ最強の経済に立て直してしまった。この二人は金融の実務家で、恐慌の原因は利子と負債で実体経済を窒息させる銀行マネーにあることを直感的に知っていたのである。ちなみに彼らは共にインフレにつながる軍拡に反対し、そのために高橋は軍人に暗殺されシャハトは最後には強制収容所に送られた。

さて、今回の衆院選を経て日本の政権党となる民主党には、この成功の教訓から学ぶ気はあるだろうか。国家予算のムダをなくせば公約実現のための巨額の財源を捻り出せるという主張は、この党のアキレス腱である。そして日本の政治を官僚主導から政治家主導に変革するという公約も、予算編成権という国政の要を官僚が握っているかぎり見かけ上の変化に終わる可能性が大きい。だが政府が直接通貨を発行するならば財源の問題が消えるだけでなく、予算編成権は完全に内閣と議会のものになり官僚は予算の執行役にすぎなくなる。民主党の公約からすれば、政府通貨は一石二鳥の上策の筈である。ところがこの党は日銀の独立性を大義にしており、先にもそれを理由に日銀総裁の人事に反対した。これでは、何よりも生活不安の解消を期待して民主党を盛り立てた国民がこの党に幻滅するのは意外に早いかもしれない。(そして言うまでもなく政府通貨はベーシックインカム実現の大前提である)。

〈関 曠野 氏 プロフィール〉(第一土曜日執筆)

1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。

講演録

http://bijp.net/transcript/article/27

質疑応答

http://bijp.net/transcript/article/79


2 シンポジウム

『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか

:ロナルド・ドーア先生を囲んで』

日時:11月13日(金)13時15分-16時30分


先日紹介した同志社大学でのイベントの詳しい情報を、山森亮さんから提供してもらいましたので、あらためてご紹介いたします。

同志社大学経済学会シンポジウム(共催:同志社大学ライフリスク研究センター)

『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか:ロナルド・ドーア先生を囲んで』

日時:11月13日(金)13時15分-16時30分

教室:静和館4Fホール(同志社女子中・高内、下記地図参照)

http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/campus_map/02.html

メイン・スピーカー:ロナルド・ドーア教授 「尊厳と貧困:ベーシック・インカムをめぐって」

シンポジスト:橘木俊詔×小沢修司×岡野八代 司会:山森亮

メイン・スピーカー紹介

ロナルド・ドーア先生は1925年イギリス生まれ。半世紀以上に渡り日本研究を続け、『イギリスの工場・日本の工場』、『日本型資本主義と市場主義の衝突』、『働くということ』など著書多数。ロンドン大学LSEアソシエイト、本学名誉文化博士。

http://www1.doshisha.ac.jp/~tyamamor/


3 BIニュース

“ベーシック・インカムを公約に掲げた党・候補者の当落状況”


衆議院選挙は民主党が勝利し、子ども手当てに代表されるように、再分配の対象が大企業から個人へ、あるいは多くの労働者が属する中小企業へと変革される方向性が見えてきました。そのトレンドの究極がベーシック・インカムとなりますが、新党日本とみんなの党は、程度こそ違え、ベーシック・インカムを公約に掲げていました。

新党日本『日本「改国」宣言』

http://www.love-nippon.com/2009manifesto.htm

みんなの党

http://www.your-party.jp/manifest.html

  • 「給付つき税額控除方式」
  • 基礎年金や生活保護を統合した「ミニマムインカム」を導入。
  • 子育て手当を欧州並みに(2万円~3万円/人・月)。義務教育期間まで支給。

選挙の結果、新党日本は、小選挙区で田中康夫氏が議席を獲得、有田芳生氏は落選で計1議席となりました。

みんなの党は、小選挙区で渡辺喜美氏など2議席、比例で3議席、計5議席を獲得しましたが、最も鮮明に政府紙幣とベーシック・インカムを打ち出した佐々木重人氏は落選しました。

佐々木重人氏の公約と選挙結果

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090826-00000092-mailo-l05

http://mainichi.jp/area/akita/news/20090831ddlk05010032000c.html

有田芳生の『酔醒漫録』: 「ベーシック・インカム」(基本所得)構想(2009/02/06)と選挙結果

http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2009/02/post_a69c.html

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