BIメールニュースNo.134  2012.2.11発行 バックナンバー~普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(1) 鈴木武志~

バックナンバーの公開は発行後1ヵ月後になりますので、メールマガジンでのご購読をおすすめします。

BIメールニュースNo.134  2012.2.11発行

【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(1)                              鈴木武志

【2】ベーシックインカムは、この生きづらさを解放するか?    ~在日コリアンと障害者の視点から

今回から連載で論考を紹介していきます。ベーシックインカム関連情報の翻訳でお世話になっている鈴木武志さんの論考です。

【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(1)                              鈴木武志

~はじめに~

政府が、就労・年齢などいろいろの条件を問わずに全国民に最低限生活レベル以上の所得を支給する普遍的ベーシックインカム(UBI)の実現が私の願いであるが、日本の現実のなかでそれをどのようにしてめざすのか。

UBI要求を正面に掲げながら、それを支持する政党が政権について実施するまで待つのが王道かも知れないが、今日の政治状況では「道遠し」の感がある。一方で、部分的(ニーズ対応型)所得保障(条件付きであろうとも)とも言える所得保障制度が現実のなかから誕生し(なかには他の政策目的をうたうものもある)、それらをつなぎあわせて既存の所得保障の拡充と併せて、UBIに接近していくことも、意外と早道かも知れないというのが、この小論の趣旨である。

UBI提唱者には失礼だが、それを「お題目」のように唱えているばかりでは道は開けないし、UBIへの手がかりが目の前にあるのを、手をこまねいて見ているのは損である。UBIについても社会保障制度についても入門段階の者の粗暴な議論だが、議論のタタキ台になれば幸いである。

~生活保護=底抜けのセーフティネット~

貧困の解消、格差の解消のためにUBIが強力な効果を果たしうることに、正面からの批判、反論は見られない。しかし、「怠け者」を温存するという「副作用」への懸念は強い。これについてはべつに議論する。

UBIの普遍性、無条件性は、現行の生活保護制度適用現場での煩雑な手続き、何としても働かせようとする圧力の強さで、実際には受給が難しいという欠陥を解消する。地方では外で働こうとすれば自動車が欠かせないが、自動車保有が受給条件に引っかかるとか、高齢者でエアコンが夏の酷暑を生き延びるのに不可欠なのに、これも同様というような話を聞いたことがある。(このような場合、制度的には受給できないのではなく、額を減らされるのか?)生活保護が国民の権利であることの社会的認識の薄さから、それを受けることへの受給者側の「申し訳ない」感、屈辱感も強い。

日本の生活保護の捕捉率(受給できるはずの世帯のうち実際に受給している世帯の割合)は20%程度と極端に低いと推定されている。イギリス90%程度、アメリカ70%程度、ドイツ40%程度。ある学者の研究では2001年には16.3%にまで低下しているという。概して、「100世帯中、10世帯が生活保護基準以下の生活をしているが、実際に保護を受けることができているのはたったの2世帯」なのである。(山森亮『ベーシックインカム入門』p.31~32)。大阪市での受給者の多さが知られているが、対応に困った周辺の自治体の担当者が大阪市での申請を勧めているとも聞く。

保護が必要な人を救うための行政ではなく、「受給者を減らす」ことを旨とした現場対応の行き着く先が、この数値ではないか?

近頃の新聞報道でも、昨年10月で生活保護受給世帯は初めて150万を超え、受給者が207万人に達したというが、「必要な人に本当に届いているのか?」という掘り下げはない。

大概の日本人は、こうした生活保護制度の実態を知らないで、何となく「日本の生活保護の水準は国際的に見て高いそうだ」、「必要な人は生活保護を受けているはずだ」と思っているし、「年金制度もアヤシクなりそうだから、自分もいざとなったら生活保護でも受けるか」などと呑気に構えている(私のその一人だった)。生活保護は「最後のセーフティネット」とはなっていないのである。

BI論者は、生活保護の条件の緩和などの現場の要求に目を向け、自らの課題として戦うべきではないか。

(この稿続く)

鈴木武志

1945年、宮城県気仙沼市生まれ。東京都立大学人文学部中退。学生時代から生協の活動に関わり、大学生協連、コープとうきょう、日本生協連などを経て、リタイア。

ベーシックインカム国際情報

「私のベーシックインカム論」大交流

【2】ベーシックインカムは、この生きづらさを解放するか?~在日コリアンと障害者の視点から

【転送歓迎】ベーシックインカムは、この生きづらさを解放するか?~在日コリアンと障害者の視点から

日時:3月24日(土)18時~20時45分場所:京都府部落解放会館3階第2会議室(地下鉄烏丸線鞍馬口下車5分)参加費:500円

問題提起者 ★梁優子さん大阪教育大学学生時より民族差別と闘う連絡会の運動にかかわる。卒業後、在日地域子ども会指導員、小学校教員を経て、在日コリアン人権協会事務局員・在日高齢者通所事業所生活相談員。現在高齢者福祉施設生活相談員・大阪市立大学大学院創造都市研究科博士後期課程

★野崎泰伸さん 立命館大学などで非常勤講師。専攻は哲学・倫理学・障害学。障害者問題を切り口に、誰もが生きづらさを抱えることのない社会の姿を模索中。著書に「生を肯定する倫理へ~障害学の視点から」(白澤社)

★コーディネーター 野村史子(ベーシックインカムとジェンダー編著者)

昨秋出版された「ベーシックインカムとジェンダー~生きづらさからの解放に向けて」(現代書館刊)は、ベーシックインカムという切り口を使い、ジェンダーの視点で日本の社会保障の矛盾を指摘した本でした。労働者、社会活動家、シングルマザー、ケアワーカー、アーティスト、学生、主婦、セクシャルマイノリティ、そして生き方にラベリングされたくない立場など、様々な当事者がベーシックインカムを巡って問題提起をしました。

しかし、まだまだいくつもの視点が、今後の課題として取り置かれたままになっていました。今回は、そのうちの、在日コリアンと障害者の視点を取り上げます。多様な生を保障する社会を作るために、皆さんと一緒に議論していきたいと思っています。ぜひご参加ください。

会場は以下を参照ください。 http://townpage.goo.ne.jp/SearchMap.php?mapkind=1&matomeid=KN2600060700001426http://www.asahi-net.or.jp/~qm8m-ndmt/guidance/map.html

主催:特定非営利活動法人 京都人権啓発センター・ネットからすま連絡先:fuyumi.cat(あっと)orange.zero.jp*(あっと)を@に変えてください。

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