BIメールニュースNo.013 2009.09.12発行
1 『地域通貨とベーシックインカム』(第3回)今井啓子(第二土曜日執筆)
2 シンポジウム
『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか:ロナルド・ドーア先生を囲んで』
3 BIニュース “ナミビアでのベーシック・インカム実験報告”
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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。
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1 『地域通貨とベーシックインカム』(第3回)
「自然に還れ」の現代バージョンを目指して
べーシックインカム・実現を探る会 主任研究員 今井啓子
ベーシックインカムを先に知り地域通貨を後で知る方が大勢おられるそうだ。私は「地域通貨花」(以下「花」とする)を実践した後でベーシックインカムを初めて知った。エンデの言葉「自然界のものと同じようにお金も劣化しなければならない」が心に染み付いているから、自然界の物を基準にして考える癖がついている。
ベーシックインカムは基礎所得を政府が国民全員に平等に分配するという考えだが、これは太陽の働きと同じであるように思われる。太陽光線は誰にでも平等に降り注ぐからだ。さらに太陽光線を賢く扱えば太陽光発電になる。そう考えるとベーシックインカムも地域通貨も自然界に沿うしくみに近い。大事なことは私たちの生きかた自体が自然に近づくように生きかたを変えることにある。これが「花」とベーシックインカムのしくみを生かし人間性を取り戻す事につながる。
私は9年間の「花」体験から長所を知ることができた。それは「花」の人たちは助け合いやつながりを作ろうという気持ちを持っているので、おかげ様、お互い様の精神が貫かれていることである。顔が見える関係作りや信頼関係作りの大切さや難しいものだが、「花」は人をつなぐ働きがあり、「花」での貸し借りは一味違って楽しいのである。
例えば、私が足を捻挫して寝込んでいることを「花」のMLで知らせた時、「花」の友人は祖母が利用した『お風呂用椅子』を「花」で貸して下さった。私はこの椅子に親近感を感じ有難くてしみじみ湯船に浸かった。その夜自宅の湯はどこの温泉より最高の癒しの薬湯に変わっていた。
そして「花」は信頼ネットワークを強める働きがある。日中営業の個人商店と、日中在宅する主婦・子ども・高齢者をつなぐのだ。「花」は街の外に逃げないで、使うほど街を回り街に信頼と利益をもたらすのである。
ひるがえって社会を見ると、食品関連会社で不祥事が続いたことは記憶に新しいし、自分の家庭で食べる野菜には農薬を撒かないが、ヨソで売る野菜には農薬を撒いたものを売る話はよく耳にする。これは人と人がつながっていないから起こることであろう。顔が見える関係であれば値段が高くなる理由を知り、農業や作る側の大変さを理解し高くて当然だから買うこともできるからである。
人と人とのつながりが断ち切られ、ひいては、人間本来の自然な気持ちが失われてゆがんだ生きかたを強いられると、心がねじれて追い詰められるのではないだろうか。そのことと自殺者が3万人を超えている事と関係しているように思えてくる。その点「花」には人間の良心をつなぐ働きがある。
円が長年使われてきたのだから、その常識から逃れるにはそれなりの時間が必要となってくる。面倒がらずに「花」を使う努力と忍耐力は必要だが、「花」を使う事で人間性を取り戻すきっかけになることは経験から理解している。ベーシックインカムでも、ただお金を配ったから終わりというわけではなく、手間はかかるが、この地域通貨の精神を込めて、共同体の中ではじめてその精神が生きてくるのである。
<今井啓子氏 プロフィール> (第二土曜日執筆)
東京生まれ。夫・娘・息子の4人家族。1999年NHK・BS番組『エンデの遺言』に出会い、地域通貨『花』を使う活動『まちだ大福帳』を始めて現在に至る。「ベーシックインカム 実現を探る会」主任研究員
2 シンポジウム
『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか:ロナルド・ドーア先生を囲んで』
日時:11月13日(金)13時15分-16時30分
先日紹介した同志社大学でのイベントの詳しい情報を、山森亮さんから提供してもらいましたので、あらためてご紹介いたします。
同志社大学経済学会シンポジウム(共催:同志社大学ライフリスク研究センター)
『ベーシック・インカムは市場社会に人間の尊厳を取り戻せるか:ロナルド・ドーア先生を囲んで』
日時:11月13日(金)13時15分-16時30分 教室:静和館4Fホール(同志社女子中・高内、下記地図参照)
http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/campus_map/02.html
メイン・スピーカー:ロナルド・ドーア教授 「尊厳と貧困:ベーシック・インカムをめぐって」
シンポジスト:橘木俊詔×小沢修司×岡野八代 司会:山森亮
メイン・スピーカー紹介
ロナルド・ドーア先生は1925年イギリス生まれ。半世紀以上に渡り日本研究を続け、『イギリスの工場・日本の工場』、『日本型資本主義と市場主義の衝突』、『働くということ』など著書多数。ロンドン大学LSEアソシエイト、本学名誉文化博士。
http://www1.doshisha.ac.jp/~tyamamor/
3 BIニュース
“ナミビアでのベーシック・インカム実験報告”
前々回のコラムを執筆してくださり、G.W.ヴェルナー著『ベーシック・インカム 基本所得のある社会へ』および『すべての人にベーシック・インカムを 基本的人権としての所得保障について』を翻訳した渡辺一男さんから情報を提供していただきました。
ドイツのシュピーゲル誌で、ナミビアのベーシック・インカム実験が報告されています。現地の人びとがさまざまな問題点を抱えながらも、意義のある実験が試みられているという論調です。いま読解の最中ですので、ある程度サマリーがまとまったら公開します。
印刷用
http://wissen.spiegel.de/wissen/dokument/dokument-druck.html?id=66360399&top=SPIEGEL
このプロジェクトのホームページ(BIG Coalition Namibia)
http://www.bignam.org/index.html
http://www.bignam.org/Publications/BIG_Assessment_report_08b.pdf
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