BIメールニュースNo.026  2009.12.12発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.026  2009.12.12発行

【1】ベーシックインカムと3K労働

ベーシックインカム・実現を探る会主任研究員 古山明男

【2】BIニュース

『日本の論点2010』(文藝春秋・編)にベーシック・インカムが論じられてます

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、

「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを

実現につなげる提言を発信します。

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【1】ベーシックインカムと3K労働

ベーシックインカム・実現を探る会主任研究員 古山明男

「ベーシックインカムが実現したら、3K労働をする人がいなくなって、みんなが困るんじゃないですか」という質問によく出会う。3Kというのは、「きつい」、「汚い」、「危険」の頭文字である。

もし、すべての人の最低生活が保障されたら、きつくて、汚くて、危険な仕事に応募する人はいなくなるであろう。それはもっともなことである。

でも、そこで思考をストップさせてはいけない。それからどうなるかである。

応募者がいなければ、十分な応募者が現れるまで労働条件が良くなる。これが自然に起こることである。それではやっていけなくなる会社と、それでもやっていける会社があるであろう。

やっていけない会社は、中国製品などと競合している分野である。すでに、縫製、部品組み立てなど、安い労賃に依存する産業はどんどん海外に出て行った。残っている工場も、長時間低賃金労働でかろうじて成り立っているところが多い。そこに賃金上昇があったら、ひとたまりもないであろう。しかし、考えてみれば、この現象は自由貿易体制が理由であり、ベーシックインカムとは関係なくすでに進行していた。すでに日本全体の3K化が進行していたのである。

この、日本全体の3K化を食い止めるために、ベーシックインカムによる内需拡大が必要になっているのである。すでに、低賃金に依存する会社の多くが、倒産するか海外に移転している。ベーシックインカムで労賃が上昇したとしても、景気が上向くために救われる会社のほうが多いだろうと思われる。

やっていける会社を考えてみよう。小売業、ビルの清掃などの会社は、労賃が上昇してもやっていける。労賃は地域全体で上昇するから、どこかの会社だけ不利になることはない。中国製品に置き換わることもあり得ない。

同じことは、介護、看護、福祉などの仕事にあてはまる。労賃が上昇しても仕事はなくならない。それどころか、そこで働く人の給料が上がると、経済の循環はたいへんよくなる。労賃の上昇に合わせて税金や保険の負担を増やして、費用を支出すべきである。それが内需拡大ということなのである。

介護、看護、福祉などの仕事が3K労働になるのは、長時間、低賃金のためだけである。それ自体は、やりがいもあり技能も必要な良い仕事なのである。

けっきょく、ベーシックインカムがあれば多くの労働で条件が改善される。3K労働とはもはや呼べないが、仕事そのものは存続するだろう。

一部には、下水道の管理とか、工事現場とか、どうしても必要だが汚かったり危険だったりする仕事もある。そのような仕事には、高い報酬と尊敬をもって報いるべきであろう。自分が嫌な仕事を他人がしてくれるなら、感謝して当然である。食うに困る人に押しつけてはいけない。

<古山明男 氏 プロフィール>

1949年千葉市生。 私塾、フリースクールを主宰。教育行財政を研究。子ども、若者、母親たちと接した経験から、「労働と教育に根本的転換が起こる」としてベーシックインカムのある社会を提唱する。電子マネーによる減価式公共通貨を提案。著書に『変えよう!日本の学校システム』(平凡社)。

http://www.asahi-net.or.jp/~ru2a-frym

2009年7月12日の当会主催の勉強会で「ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換」を講演。

講演録

http://bijp.net/transcript/article/91

http://bijp.net/transcript/article/98

【2】BIニュース

『日本の論点2010』(文藝春秋・編)にベーシック・インカムが論じられてます

12月7日に出版された『日本の論点2010』11 雇用と労働の『論点36 ベーシック・インカムの意味は』において田村哲樹氏が『ベーシック・インカムは流動化社会で生きていくための「足場」となる』という題目で、ベーシック・インカムを取り上げています。

それに対して、濱口桂一郎氏は「失業者と非労働者を区別しないベーシック・インカム論の落とし穴」という題目で、ワークフェア論者としての立場から、ワークフェア対BI論という図式のもとで、自説を展開しています。

濱口桂一郎氏自身による紹介

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-6d25.html

以前メールニュースでも取り上げましたが、日本の論点PLUSでも論じられていました。

文藝春秋編 日本の論点PLUS 今週のキーワード-論争を読み解くための重要語-

ベーシック・インカム(2009.09.17 更新)

http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/sample/keyword/090917.html

これを発展させて『日本の論点2010』に取り上げられたのだと予想されます。

参考サイト

下記のサイトで、目次だけ立ち読みできます。

http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784165030904

田村哲樹氏のブログ

http://d.hatena.ne.jp/TamuraTetsuki/

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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