BIメールニュースNo.027  2009.12.19発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.027  2009.12.19発行

【1】『ベーシックインカムの政治論 その4(労働と所得の分離について)』

白崎一裕(第三土曜日執筆)

【2】BIニュース 国会におけるベーシック・インカムの議論

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】 『ベーシックインカムの政治論 その4(労働と所得の分離について)』

ベーシックインカム・実現を探る会 代表 白崎一裕

「POSSE 5月号」で、山森亮さんの「ベーシックインカムが生活保護よりも現実的な理由」という論文が掲載されていた。そのなかで、私が注目したのは、この論文のもとになっているインタビューをした編集部・坂倉さんの「『戦略的に優先的な運動の課題』としては、働けない人より働ける人への施策を優先すべきなのにベーシックインカムではそうならない。」という問いかけだ。

これに「戦略的」とある以上、やはり、このベーシックインカム(以下BI)の政治論でとりあげないわけにはいかない。まず、ここでのBIに対する誤解は、「BIは働けない人へのもの『だけ』なのか?」ということである。BIのもっとも基本的なテーゼに、労働と所得の分離ということと労働の意欲・能力を問わない。というものがある。そもそも、BIは働くことと無関係に考えられている。まずは、その思想的背景を考えてみよう。

労働と所得が「切り離せない」労働観というのは、ミレーの「種まく人」にあるような農民の労働や職人労働のイメージではないだろうか。ここには、二重の意味がこめられている。それは、自分の能力が「個人」で富を生み出しているということと、その富を得る過程で「人格」も陶冶されるという意味だ。

しかし、現代の労働を考えてみよう。個人の労働のみで富がうみだされているだろうか?たとえば、パソコンを使用しインターネットで情報をあつめながら労働をするとする。作業しているのは個人に違いない。しかし、通信回線やパソコン技術そしてさまざまな他者の作成した情報など、すべて社会的結合(アソシエイト)により労働が進行する。まさにダグラスのいう社会的文化的遺産の上にたって労働し富を生み出しているわけで、そこに占める個人の労働能力は、その一部にすぎない。

もうひとつ、労働と人格の陶冶だが、ひらたく言うと「人間は働いてこそ一人前の人間に育つ」ということだ。しかし、これも、私の転職を繰り返してきた経験では、たいして技能も身に付かず働く充実感もなく、疲労と擦り切れていく感覚だけが残るのが現代の労働ではないだろうかという感想だ。

この感想をうむ遠因は、20世紀初頭の自動車製造のオートメーション化システムであるテーラー・フォードシステムにあると思う。これは、熟練労働をライン労働の単純作業に分割して生産力を向上させるものである。このライン労働は、まさに労働と人格の分離を進行させた。現代は、そのライン労働が全社会的に拡大している世界だと思われる。派遣労働やパート労働部門の増大もそこに原因がある。

(この稿続く)

<白崎一裕 氏 プロフィール>(第三土曜日執筆)

ベーシックインカム・実現を探る会 代表。株式会社 共に生きるために 代表取締役

http://www.livetoge.com/

【2】BIニュース 国会におけるベーシック・インカムの議論

以前メールニュースでもお伝えした国会内のベーシック・インカムの議論ですが、公明党の松あきら参議院議員が、またベーシック・インカムについて発言し、それが『子どもの貧困―日本の不公平を考える』 (岩波新書) で有名になった阿部彩に対してのものでした。下記に紹介します。

173 参議院 国民生活・経済に関する調査会 1号 平成21年11月25日

松あきら参議院議員が阿部彩氏に対して

まず、阿部参考人でございますけれども、私もベーシックインカム、当調査会で四月にちょっとそのことで問題提起させていただいたわけでございますけれども、アメリカの、先ほど出ましたEITC、あるいは英国のWTCですね、日本もこうした給付付き税額控除というのはもう導入すべきときが来ているんじゃないかと私は考えるんですけれども、しかし、アメリカではこの方式で少なからず不正受給があるということを聞きました。この問題に対してどう対処しているのか、こういう問題が看過できる問題なのかどうか、一点お聞きをしたいと思います。

阿部彩氏の回答

確かに、アメリカのEITCは、一時不正受給の率が非常に高いということで問題になりました。ただし、不正受給のほとんどのケースは、子供があることを条件としているところが非常に大きいんですけれども、その子供の定義なんですね。というのは、アメリカでは非常に離婚や再婚率が高いですので、その子供を扶養している親がだれかというものがそれほどはっきりと決まらなく、そのEITCの条件というのに何か月間一緒に暮らしていなければいけないですとかいろいろな条件が付きまして、必ずしもぱっとそれが分かるものではないんですね。

ご自分で前後の文脈を知りたいという方は、下記の国会議事録検索にて、「簡単検索」あるいは「詳細検索」より調べてみてください。

http://kokkai.ndl.go.jp/

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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