BIメールニュースNo.029 2010.1.9発行
【1】働かざる者食うべからず!? 関 曠野
【2】BIニュース
中日新聞元日社説でベーシック・インカムが取り上げられました
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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、
「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを
実現につなげる提言を発信します。
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【1】働かざる者食うべからず!?
関 曠野
ベーシック・インカムの実現に対する最大の障害になりそうなのが、多くの人が未だに「働かざる者食うべからず」という格言を信奉していることだろう。周知のように、これは新約聖書中のパウロの言葉でレーニンが引用して世に広まった格言である。そしてレーニンの思想は私にはナンセンスだが彼の引用にも三分の理はあったと思う。株や債権からの収入は「たんなる所有に対する報償」であり純然たる不労所得である。ところが所得保証と聞くと「働かざる者・・」と反発する人が株や債権からの不労所得を非難したという話を聞いたことがない。不思議なことである。
ではベーシック・インカムを正当化する根拠は何か。それを人道主義や宗教に求める人もいるだろう。だがダグラスの優れているところは、生産の実態からそれを根拠づけていることにある。彼の思想はまさに経済思想として一貫しているのである。彼によれば、生産の90%は道具とプロセスの問題であり人間の労働は僅かな役割しか演じていない。そして道具やプロセスは人類が永年蓄積してきた共同体の文化的遺産であり、ゆえに万人はその文化の継承者として生産された富から配当をもらう権利を持っている。
ダグラスはエンジニアとしての現場体験からこう言っているのだが、一例として農業を考えてみよう。かりに都会人が脱サラして地方で農業を始めたとして、土を耕し種を播くだけで事は済むだろうか。まず土壌自体が歴代の農民が形成し保全してきた遺産である。そして農民が先祖代々蓄積してきた知恵やカンやコツを身につけねば、彼は地域の特性に適したまともな作物は作れないだろう。だから彼が一人前の農民になるには十年位はかかる。農業をやるとは共同体の文化的遺産を受け継ぐことなのである。
工業においても事情は同じである。工業における生産は幾世代ものエンジニアが試行錯誤しながら作りあげたシステムによって行われている。だから派遣の若者でも高度な工業製品を作ることができる。ホワイトカラーの職場では企業のソフトウェアが生産力であり、人間はいわばその周辺機器にすぎない。このように生産は殆ど道具とプロセスの問題なのだから、労働と雇用は所得の唯一の根拠にはならないのである。
<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)
1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。
2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。
講演録
http://bijp.net/transcript/article/27
質疑応答
http://bijp.net/transcript/article/79
【2】BIニュース
中日新聞元日社説でベーシック・インカムが取り上げられました
本年元日の中日新聞の社説で、子ども手当はベーシック・インカムの一種だという文脈で取り上げられています。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2010010102000044.html
元日の社説でベーシック・インカムが取り上げられたということで、ついにマスコミの中で共通理解事項になったことが明白になりました。しかも、資本主義の根本的矛盾とその支えあいによる解決というのは明快ですし、高校教育無償化や農家の戸別所得補償政策など、他の民主党の政策とも結びつけて論じられている点も高く評価できます。
昨年のBIニュースでも取り上げましたが、琉球新報など、沖縄をはじめとした地方においてベーシック・インカムが取り上げられている傾向があります。新しい動きは、周縁から立ち上がるものだということを思い起こさせます。
「ベーシック・インカムは地方から」が今年のキーワードかもしれません。
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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
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