ＢＩメールニュースNo.035　 2010.2.20発行

【1】ベーシックインカムの政治論　その５　（労働と所得の分離について続編）

白崎一裕（第三土曜日執筆）

【2】日経ビジネス　オンライン　ベーシック・インカムへの道筋

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】ベーシックインカムの政治論　その５　（労働と所得の分離について続編）

ベーシックインカム・実現を探る会　代表　白崎一裕

関曠野、ダグラス、ヴェルナーの各氏は、われわれは「潜在的失業状態」でありその根拠はオートメーション化による生産活動にあると、ほぼ同じ趣旨のことを述べている。私は先のメルマガでその淵源として１９００年代初頭に成立したテーラー・フォードシステムのことについて言及した。

テーラーは、「科学的管理法」の名のもとに熟練労働の労働過程を分割化して生産工程を「客観化」するシステムを開発した。たとえば、金属加工熟練工の労働過程を１２の項目に分割して、その項目の条件ごとに変数を探す。そして、熟練労働者の直感に頼っていた作業を数字的に決定できるようにしてオートメーション機械に移転できることを可能にしたのである。

ここで、おきたことは何か？それは、以下のことだ。熟練労働が解体され、労働（者）が工程を支配し管理する過程を逆転し、工程そのものが労働（者）を支配できるようにしたということなのだ。主観と客観の混合した熟練労働は、労働過程・工程とも渾然一体となった、熟練労働者の人格の反映であった。しかし、テーラーシステムは、それを廃棄し「労働」と「人格」を分離したのである。人格なき労働の誕生である。（この部分は『労働の哲学』内山節　田畑書店から学んだ）

フォードは、テーラーの考えをもとに自動車を大量生産するためのアッセンブリ―・ライン（ベルト・コンベアシステム）をつくりだした。このラインは、すべての部品が規格化されており、作業効率をあげることに成功した。また、彼は、労働者の賃金をあげることを目標として、その賃金で自ら生産した自動車を購入することを労働者の労働目的とさせた。大量生産・大量消費時代の幕開けである。

フォードシステムは、当初工場内の労働に適用されていたが、後にこのシステムは社会全体に広がることとなる。また、生産現場での労働手段の機械化・電子化により、労働はどんどん細分化・部分化・規格化されていく。社会全体を巨大な生産工程とするならば、その生産工程に完全に従属する人格なき部品として存在する大量の人間が生み出されるようになってきたのだ。ここに現代の派遣・パート・ワーキングプア労働問題の根本がある。わたしたちは、この人格なき部品労働を通じての所得を拒否して、人格を奪還する道具としてのベーシックインカムを要求すべきである。すでに死んでいるテーラー・フォードシステムを万人の人格に従属させよう。そのためのベーシックインカムだ！

＜白崎一裕　氏　プロフィール＞（第三土曜日執筆）

ベーシックインカム・実現を探る会　代表。

「とちぎ教科書裁判通信」

http://kazuhihi.blog39.fc2.com/

【2】BIニュース

日経ビジネス　オンライン　ベーシック・インカムへの道筋

１月２６日の記事で少し遅めのニュースですが、日経ビジネスオンライン版に、ベーシックインカムに関する詳細な記事が掲載されました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100125/212388/?P=1

IDとパスワードを取得しないと２ページ以降の記事が読めないのが残念ですが、基本的な考え方は紹介されています。「働かざる者食うべからず」「お金持ちにも配るのはおかしい」という思想について反論を加えていますし、小沢修司さんの所得税案についても掲載されています。

どんどん、ベーシックインカム理解の裾野が広がっていることを実感させてくれる記事です。

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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