BIメールニュースNo.039 2010.3.20発行
【1】ベーシックインカムの政治論・番外編~~「POSSE」vol.6号の批判に応答する~~
白崎一裕(第三土曜日執筆)
【2】ベーシックインカム日本ネットワーク(BIJN)設立記念国際学術シンポジウム
「グローバリゼーションと労働の新しい形:ベーシック・インカムをめぐる世界の動き」
【3】BIニュース
ゲッツ・ヴェルナー氏の理念に基づくドイツでのベーシックインカム実験
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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、
「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを
実現につなげる提言を発信します。
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【1】ベーシックインカムの政治論・番外編
~~「POSSE」vol.6号の批判に応答する~~
ベーシックインカム・実現を探る会 代表 白崎一裕
最新号の「POSSE」(合同出版)は、特集タイトルが「ちゃんとやれ!民主党」となっているが、内容は、冒頭論文・宮本太郎さんの「持続可能な生活保障の戦略は、アクティベーションしかない」から、かなりベーシックインカムを批判的に意識した内容になっている。きわめつけは、錦織史朗さん「ベーシックインカムが使えない4つの理由」だが、筆者は錦織論文のBIへの「新自由主義的」傾斜の懸念・批判についてほぼ同意見である。そして、この特集内容や錦織論文をBIを深化させるための有効な提言として受け止めさせていただいた。今号から数回にわたって、「POSSE」特集への応答編として書かせていただこうと思う。
最初に考えてみたいのは、錦織論文の後半にある「労働を軸とする社会」を乗り越えるためにーーーという問題意識だ。この問題意識自体はまったく同感だ。課題は、それをBIのように労働と所得を完全に分離し所得保証をすることで達成するのか、それとも、錦織さんが提案するように、労働組合の機能を変革し労働環境における生存保障を国家にやらせることで達成するのかの方法論における違いの問題である。
この問題を考えるときに、まず頭におかなければならないのは、逆説的ながら現代は「労働を軸とする社会」なのだろうか、ということである。錦織さんのいわれるように確かに、アジア諸国などの劣悪な労働に依存した日本経済の問題はある。しかし、それは、後述するが、グローバル経済を支える金融システムとマネー(死にかけているドル基軸通貨体制など)批判が主要な課題なのではないだろうか。
このことを前提として、現在の日本の労働の状況から考察してみたい。宮本太郎さんは、スウェーデンモデルの検討の中からグローバル化と脱工業化がすすんだ中では、労働市場から安定したよい仕事が失われ、労働者の技能を高めてもそもそも仕事がないのでは話にならない、という指摘をしている(『生活保障』p116岩波新書)
ここで、重要な指摘は「そもそも仕事がない」ということである。ポスト工業化社会での雇用や労働はどのような存在なのか?完全雇用などということがありうるのだろうか?そして、労働にしばりつけられない尊厳ある暮らしを営める労働の在り方が可能なのだろうか?という視点で上記のことを考えてみる必要がある。
筆者は、所得を得るために奴隷的に拘束された社会システムに従属する「部品的行動」が、「労働」と称されているにすぎないーーと考えている。(次回に続く)
参考
雑誌『POSSE VOL.6』ようやく完成!注文受付開始
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/0e03bc9febf82eaca30d44f3aaa15f36
NPO法人 POSSE
<白崎一裕 氏 プロフィール>(第三土曜日執筆)
ベーシックインカム・実現を探る会 代表。
「とちぎ教科書裁判通信」
http://kazuhihi.blog39.fc2.com/
【2】BIニュース
ゲッツ・ヴェルナー氏の理念に基づくドイツでのベーシックインカム実験
ドイツのシュトゥットガルト市とブランデンブルク州で無条件ベーシック・インカムの実験を、2010年の半ばから、2年間行うようです。
http://www.manager-magazin.de/geld/artikel/0,2828,667336,00.html
『ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ』や『すべての人にベーシック・インカムを―基本的人権としての所得保障について』が邦訳されたことで知られるゲッツ・ヴェルナー氏の理念に基づいて実施されます。
財源は、シュトゥットガルトのブロイニンガー財団からのお金+寄付金ということで700万ユーロです。
対象となるのは、100人と人数は少ないですが、毎月800ユーロを無条件に与えるというものです。 対象者は、大卒者、母親、早めに年金生活を始めた人、失業してハルツIVの対象となっている人、長期の失業者があげられています。
このお金をもらった結果どんな時間の使い方をするか、無条件BIによって、職業的活動や、名誉職的な意味ある活動へと刺激されるかどうか、を調べるということです。
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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
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