BIメールニュースNo.068 2010.10.9発行
【1】『消えた老人問題のよりどころこそベーシックインカムに求めよう』
ベーシックインカム・実現を探る会 代表 白崎一裕
【2】BIニュース
「国民の声アイディアボックス」でベーシックインカムについて要望や提案を伝えられます
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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。
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【1】『消えた老人問題のよりどころこそベーシックインカムに求めよう』
ベーシックインカム・実現を探る会 代表 白崎一裕
再度、「POSSE」誌がベーシックインカム(BI)を特集している。推進・反対派を含め代表的な論者に対してのインタビューなどが中心だが、欠落している視点もあるようだ。その点も含めて、こちらも再度「POSSE」への批判的応答の連載をはじめていこうと思う。その前ふりとして、2010年9月30日 朝日新聞論壇時評で、東浩紀さんがやはり「POSSE」のBI特集について批評しているので、その内容の検討をしてみたい。(論壇時評のタイトルは、「消えた老人問題 よりどころ、どこに求める」)
東さんの問題提起は、足立区の「消えた老人問題」にはじまる。住民票などでは生存しているはずの高齢者が所在不明であることがわかった「あの」事件である。この原因を福祉国家のゆらぎととらえ、その解決法を示す論者をとりあげている、国家の福祉政策を精緻にするのではなく家族や企業・地域が福祉を担う「共同体主義」的発想の紹介。しかし、その「共同体」はもう機能していないではないか、という指摘。そしてBI問題へとつながる。
この流れで、取り上げられるのは、萱野稔人さんの論理で、「BIで弱者を労働から解放することは、彼らから承認の場を奪い社会の「包摂」(心のつながり)の機能を著しく阻害してしまう」という。東さんはこれを重要な問題提起と評価するのだが、私には、なぜ重要な問題提起なのか理解不能である。労働における承認の場の消滅ということは、労働者がその生存を維持するために労働市場にしばりつけられ、それゆえ、自由な生の表現・発露の機会を限定されたり、奪われたりすることから生じている。その証拠に、定年を迎えた人々が、地域ボランティアやNGO・NPO活動をはじめたり、地方に移住して農業にいそしむなどの現象は、まさに、人々が労働市場から解放されたことによるものではないだろうか。
東さんの指摘にあるように、BI思想のひろまりの背景に、「家族や地域など、共同体の精神的な機能に絶望」ということももちろんあるだろう。しかし、その先にあるものが「もはや社会に「包摂」を期待しなくなり、ドライな富の再分配(おそらくBIのこと)しか望まなくなる」というのは、まったく違う。逆に!BIにより人々は、参加と包摂を期待し活動への希望を持つのだ。私は、以前から、BIは、社会への参加権(券)だと言い続けてきた。ジョン・ロックなどは個人におしつけられてくる社会集団性を、法による秩序(権利と義務)のもとに政治的能動性を有する個人が、「政治的共同体」へと転換することの重要性を指摘している。「第二の自然」である社会に、人々が受動的にしばりつけられるのではなく、自由な人格として個人が社会に対して態度表明する(これらのことは、関曠野さんの以下の文章から全面的に学んだ。「ホロコーストはなぜ起きたか、第四回『社会的なるもの』のカテゴリー」)。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4041/seki/0106.html
この「自由な人格」を現実的・物質的に支える手段が、まさにBIなのだ。多様な家族のありかたや地域社会の再興は、一見ドライなBIにより「温かく」促されるであろう。また、その過程と結果の中で、ひとびとは労働市場に縛られてきた存在とは違う、これまた多様な「承認や居場所」を創造するはずである。消えた老人たちは、豊かに姿を現すだろうーーーBIをよりどころにして。
<白崎一裕 氏 プロフィール>(第三土曜日執筆)
ベーシックインカム・実現を探る会 代表。
「とちぎ教科書裁判通信」
http://kazuhihi.blog39.fc2.com/
BS11動画映像 田中康夫 vs 白崎一裕 対談
http://bijp.net/data/article/182
12分レクチャー:白崎一裕「ベーシックインカムまるわかり」
http://bijp.net/data/article/145
【2】BIニュース
「国民の声アイディアボックス」でベーシックインカムについて要望や提案を伝えられます
政府が下記サイトで国民の声を募集しており、その中でベーシックインカムにつ
いてのトピックが立てられています。
ベーシックインカムの導入 | 国民の声アイディアボックス
https://koe.openlabs.go.jp/ja/idea/00194/
政府は「時代や状況の変化で、本来の目的にそぐわなくなった規制・制度を改革する取組みを加速し、新成長戦略の実現をより確かなものとする」目的で、インターネット上に「国民の声アイディアボックス」を設置し、2010年9月24日~10月14日(12:00まで)の期間限定で、市民の声を募集しています。
環境・エネルギー、観光立国など8つのカテゴリが立てられ、多数の投稿が寄せられるなかで、金融戦略の項にベーシックインカムについてのトピックも立てられています。このトピックに対して、賛成・中立・反対の投票やコメントをつけられます。政府に要望や提案を伝えたい方は、IDを登録して投票・コメントをつけてみてはいかがでしょうか。
期間が9月24日(金)~10月14日(木)12時と限られており、政府に要望や提案を伝えたい方は是非IDを登録して、コメントしてみてください。mixiやヤフー、グーグルのIDを持っていれば登録はしやすいです。
「国民の声アイディアボックス」
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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
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