BIメールニュースNo.080  2011.1.9発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.080  2011.1.9発行

【1】自然権をめぐる問題点

BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長 野末 雅寛

【2】BIニュース

「主義」としてのベーシックインカム

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】自然権をめぐる問題点(1)

BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長 野末 雅寛

自然権に立脚するBI理念は思想的あるいは政治的立場を異なる人々を納得させることは難しいだろうという、遅澤秀一氏のコラムに触発されてこの連載を開始した。

http://www.nli-research.co.jp/report/research_paper/2010/rp10_004.html

実は、遅澤氏の指摘はもっともだ。というのも、自然権の淵源にあるジョン・ロックが主張する自由権にその根っこがあるからだ。

イギリスの民主主義勃興の担い手とされるロックは、ブルジョア層の利益を代弁する一面があった。個人の生命、身体、財産が不可侵である根拠を、人間が神の所有物であり神意によって生きることを許された存在であることに求めると同時に、それは、個人の自由の基盤である私有財産の擁護と不可分であり、法的政治的にきわめて具体的な権利でもあった。

つまり、個人の自由と尊厳を尊重するキリスト者と、資本主義を推進する指導者という二面性があり、それは自然権の二面性でもあるのだ。

昨年流行したサンデル教授の「正義」の3分類、つまり、美徳を重んじるアリストテレスの立場、個々人の幸福を比較考量し、それを最大化することを重んじるベンサムの立場、そして個人の無条件の尊厳を重んじるカントの立場だが、この内、2つはロックに源流がある。

ベンサムの功利主義は、現代の官僚がGDPやら費用便益分析やら経済成長を目指して政策調整をする考え方の根拠となっている。もう一つのロックからカントに至る人格主義は、差別への反対や死刑廃止論など、経済的な便益で計測できない個人の尊厳を擁護する根拠となっている。

前者の功利主義の立場に立てば、後者の人格主義の立場は主観的で公平性に欠けるように見えるだろうし、後者から前者に対しては、100人の幸福のためには1人が殺されても平気なのかという古くからの批判がある。

この流れは日本に導入された時、大雑把に言えば、福沢諭吉が前者の立場に立ち、中江兆民が後者の立場に立つ。日本が自然権を受け容れた状況を分析することはとても興味深いが、それは他日行う。

推測だが、エコノミストの遅澤氏は「自然権」を後者のイメージでのみ捉えたのではないか。しかし、自然権の源流をたどれば経済的権利と個人の尊厳は両立していたのだ。私は、この総合をBIに求めようとしているし、これから展開していく。

<野末雅寛 プロフィール>

BI(ベーシック・インカム)メールニュース 編集長

http://www.mag2.com/m/0000292484.html

http://bijp.net/mailnews/

http://twitter.com/nozuem

富山の片田舎で生活する環境で世界恐慌に直面して、自殺者増加を防ぐと同時に、画期的な起業・イノベーションをも促すBIの必然性を痛感しない日はない。

【2】BIニュース

「主義」としてのベーシックインカム

2007年頃から他に先んじてベーシックインカムに着目していた山崎元氏が、標記のタイトルで、ベーシックインカムの最新コラムを書いています。

http://diamond.jp/articles/-/10608

「シンプルさ」「公平さ」「自由さ」「格差是正効果」「低コストな制度」というベーシックインカムのメリットを評価した上で、しかし、ベーシックインカムは実現しないだろうというオチは、ユーモア精神の表れでもあるでしょうが、官僚の仕事が減ってしまうからという根拠は妥当だと思います。

ベーシックインカムは、個人に力を与えることですから、官僚にとって仕事が奪われるだけでなく、官尊民卑の風土が失われるようで何か不気味なものなのでしょう。子ども手当についても、同様の根拠で擁護していた点も興味深かったです。

山崎氏は、ベーシックインカムそのものではなく、ベーシックインカム的な制度を徐々に実現していけばというアプローチを提案していますが、今の子ども手当へのネガティブキャンペーンを見ていると、いずれにしても、官尊民卑の風土を変えて、個人に力を与えることを肯定する世論形成が必要であるように思います。

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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