BIメールニュースNo.062  2010.08.28発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.062  2010.8.28発行

【1】ベーシックインカムを通じて社会を作り直すこと    田村哲樹

【2】BIニュース

SYNODOS Blog : 橋本努さんによるベーシック・インカム論

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、

「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを

実現につなげる提言を発信します。

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【1】ベーシックインカムを通じて社会を作り直すこと    田村哲樹

このエッセイでは、BIを通じて「社会」を作り直すというシナリオを描いてみたい。ここで「社会」とは、「国家」と「市場」から区別された空間を指す。こう書くと当たり前のことのようだ。しかし、この区別はしばしば曖昧になる。

たとえば、私たちは、「誰もが勤勉に働く社会」を「よい社会」と思いがちである。「勤勉に働く」ことは「市場」の領域では大切なことだ。だが、「勤勉に働く人」が、地域や家族のことをきちんと考え、そこで日々起こる問題に向き合っているとは限らない。そもそも、長時間勤務の正規雇用者とその日の暮らしもままならない非正規雇用者とにとって、自分の仕事以外の何かに十分な時間を割くことは難しい。

あるいは、「社会」に何か問題が起こった時に「国家の責任」が問われることがある。確かに「国家」は、「社会」に起こった問題に対応する必要がある。だが、「国家」が必ずしもあらゆる問題に対応できる能力がないこと、それにもかかわらず「国家」に委ねることで却って問題が起こることを、私たちは既によく知っているはずである。

「社会」には、日々様々な問題が生じる。だが、そのすべてを「市場」や「国家」で解決できるわけでも、そうすることが好ましいわけでもない。「社会」の問題は「社会」で解決できるようにするのがよい。そのためには、私たち自身が「日々の問題解決者」となることが必要である。

ここにBIの意義がある。BIによって労働以外から得られる所得によって、労働の持つ重みは、実体的にも心理的にも減少する。労働以外のことに使える時間が増えるとともに、そのような時間の大切さを実感できるようになる。その結果、私たちは、「社会」の様々な場面における「日々の問題解決者」として行動しようと考えるようになるかもしれない。

BIの無条件性は、「日々の問題解決者」になることを強制しない。だが、無条件であるがゆえに、BIは、すべての人々に「日々の問題解決者」となる機会を提供できる。「日々の問題解決」に携わる人にだけ支払われる給付は、それに携わる人/携わらない人という社会的分業を招きかねない。その結果、「仕事が忙しいから」「女性(妻)の役割だから」と、「日々の問題解決」に携わらないことが正当化されてしまうかもしれない。BIは無条件だからこそ、誰もが「怠け者」にならない可能性を提供できるのである。

<田村哲樹 氏 プロフィール>

専門は政治学・政治理論。特に、民主主義理論、福祉国家論、ジェンダーの政治学に関心。著書に『政治理論とフェミニズムの間』『熟議の理由』など。1970年生。名古屋大学大学院法学研究科教授。博士(法学)。

【2】BIニュース

SYNODOS Blog : 橋本努さんによるベーシック・インカム論

橋本努さんが、ベーシック・インカム論を公表しています。

ベーシック・インカム論(1) 橋本努

http://synodos.livedoor.biz/archives/1479731.html

ベーシック・インカム論(2)

http://synodos.livedoor.biz/archives/1479734.html

「1.基本所得論の魅力」でそのメリットを列挙し、しかしながら、「2.基本所得論の実効的な困難」では、経済成長なきところにベーシック・インカムの実効性などありえないとし、「3.思想的課題」では、ベーシック・インカムが目標とする実質的な自由の実現と、ベーシック・インカムという政策との間の大きなギャップを指摘し、きめこまやかな福祉の充実こそが実質的な自由を実現するのではないかと提言しています。

橋本努さんのホームページ

http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hasimoto/

橋本努さんのブログ

http://d.hatena.ne.jp/tomusinet/

橋本努さんのツイッター

http://twitter.com/hashimototsutom

橋本努さんは、札幌学院大学公開シンポジウム「ベーシックインカムを検証する」

(2010年3月7日)ではコメンテータを務めています。

http://www.econ.hokudai.ac.jp/~hasimoto/Symposium%20Arguing%20Basic%20Income%20201003.htm

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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