BIメールニュースNo.138  2012.3.3発行 バックナンバー~普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(3) 鈴木武志~

バックナンバーの公開は発行後1ヵ月後になりますので、メールマガジンでのご購読をおすすめします。

BIメールニュースNo.138  2012.3.3発行

【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(3)                              鈴木武志

【2】「Yahoo!みんなの政治」に、評論と翻訳記事が掲載されました

【3】「ベーシック・インカムを考えるin京都府立大学」のおしらせ

【1】普遍的ベーシックインカム(UBI)への「脇道」的アプローチ(3)                              鈴木武志

 

~農業者戸別所得補償とUBI~

  これも民主党の目玉政策だが、コメなどの主要作物を一定量以上生産する農家に対して、10アール当たり1.5万円の収入を保証するもので、2010年度で5618億円が予算化され、130万件の応募があるという。「食糧自給率の引き上げ」が政策目的とされているが、事実上、コメ農家への所得保証ではないか。しかしこれは、ビジネスとして成立していない小規模なコメ生産を温存し、生産者の集約による効率化にとって逆効果だと思う。野菜・果物農家の多くは、このような価格補償制度なしに、自前のマーケッティングを含めた努力で、農業をビジネスとして成立させている。

小規模コメ農家の所得保障をするのであれば、耕作と切り離して行えばよいのであり、そうすれば農地の集約=コメ生産規模の拡大の条件となる。中山間地の大規模化できない地域には、無理してコメ生産での所得保障をするのではなく、無条件の所得保障の方が、社会政策としても農業政策としても合理的ではないか。耕作規模などに関わらず一人ずつに所得を給付し、リタイアする場合は他者(会社を含む)に農地を貸すか売却する(多分、農地法の改正が必要)、農業を続ける場合は価格補償なしで、のんびりとやるか、規模を拡大したコメか野菜・果物などの積極経営で自立した強い農業を形成する。農地の環境保全効果論など強い反論を承知の強弁だが、BI論者に農業者にも目を向けて欲しいので、あえて書いた。また、農業経済学者の「参入」を期待する。

 

~「月額7万円の最低保障年金」=高齢者向けUBI~

  「各種年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を」も民主党のマニフェストの一環である。その財源を17%程度への消費税率の引き上げを想定しているが、当面の「社会保障制度と税の一体改革」の実現の戦術面で、その試算を公表するかどうか、民主党は迷っている。

これが実現すれば、高齢者向けUBIが事実上実現する(別途の稼得がある場合の除外や減額、一定水準以上の層の引き下げの是非などの議論も出てこようが )。民主党・自民党を問わず消費増税は、どうやら「一人前の国家」の証と観念されているようだ。この部分での増税の余地が、国家財政の健全性回復の余地と見られ、国債が世界一低い利率で全額が買われている根拠である。それならそれで、こちらは低所得者への税額控除などの拡充で対応し、最低保障年金を実現してしまってはどうか。

(この稿続く)

鈴木武志

1945年、宮城県気仙沼市生まれ。東京都立大学人文学部中退。学生時代から生協の活動に関わり、大学生協連、コープとうきょう、日本生協連などを経て、リタイア。

ベーシックインカム国際情報

「私のベーシックインカム論」大交流

 

【2】「Yahoo!みんなの政治」に、評論と翻訳記事が掲載されました

当メールニュース編集長の野末の評論と、いつも翻訳でお世話になっている鈴木武志さんの翻訳記事がYahoo!みんなの政治」- 無条件で最低生活保障「ベーシック・インカム」とは - に紹介されました。

ベーシックインカムは、橋下徹大阪市長が検討していると表明したことで社会からの注目を集めていますが、このような一般的な記事でも広く紹介されるようになり、メールニュースでこれまで伝えていたことが理解されるようになることを願っています。

掲載された記事

橋下徹大阪市長のベーシックインカムを分析・評価するベーシックインカムメールニュース編集長 野末雅寛

所得保障を受けても人は働き続けた! カナダの町の実験を検証

【3】「ベーシック・インカムを考えるin京都府立大学」のおしらせ

ベーシック・インカムとは、すべての人に、生活に最低限度必要な所得を、無条件に、生涯にわたって支給する構想です。最近では、「維新版・船中八策」にベーシック・インカムが取り入れられ、橋下大阪市長も実現をめざしています。

京都府立大学公共政策学部長の小沢修司先生は、ベーシック・インカムの研究において、日本の第一人者です。その小沢先生と、久しぶりに母校で一緒に勉強してみませんか?

と き:2012年3月3日(土)

ところ:京都府立大学 合同講義棟2階第2講義室(正門入ってすぐ右手の建物です)

(京都市左京区下鴨半木町1-5)

 

内 容:

13:00~受付

13:25 開会

13:30~15:00

第1部 ベーシック・インカムの基礎をしっかり理解しよう

「ベーシック・インカムってどんな制度~教えて小沢先生~」

講師:京都府立大学公共政策学部長 小沢修司教授

15:00~15:15 休憩

15:15~16:45

第2部 みんなで語ろう ベーシック・インカムがあるとき・ないとき

「ベーシックインカムは実現できるのか」:参加者みんなで議論をします。

16:45 閉会

17:30~懇親会

会場は大学の近くを予定しておりますが、人数によって決定しますので、当日ご案内します。

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