橋下徹大阪市長のベーシックインカムを分析・評価する ベーシックインカムメールニュース編集長 野末雅寛

橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会が「船中八策」でベーシックインカム(BI)を検討していることを表明したことが大きな反響を読んでいます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120213-00000000-san-pol

また、橋下氏がTwitterでも踏み込んで発言していることもあり、現時点でBIについて考えていることが見えてきましたので、分析・評価してみます。

http://blogos.com/article/31892/

http://blogos.com/article/32052/

評価できる点は、補助金を業界団体という供給サイドから、住民という需要サイドに振り向けることがBIだとしている点です。私たちの資源を法人から個人へと移すことになるわけです。そして橋下氏が指摘するように、役所の権限や仕事を減らすことにもつながるでしょう。莫大な財源が眠るとされる特別会計にメスを入れてBIの財源とする財源論が一部で支持されていますが、それとも重なるところがあるでしょう。

しかし、他方でTPPに賛成し、成長戦略という名のもとに供給サイドに補助金を振り向ける可能性も見られ、両者は矛盾しているように見えます。TPPに賛成しては、海外から安い商品とサービス、労働力が流入してしまい、せっかくBIで需要を底上げした分を損なってしまいます。

さらに、負の所得税とBIを抱き合わせで提案している点が疑問です。負の所得税はミルトン・フリードマンが提唱した考え方で、福祉を全て民営化して、その分を一定収入以下の人に、所得額に反比例して現金支給する方が効率的であるとする考え方です。これは、すべての個人に購買力を与えて需要を底上げするというBIの考え方とは矛盾します。BIそれ自体は、弱者への生活支援を目的とする福祉とは何の関係もなく、それ故に負の所得税とも何の関係もありません。

確かに、橋下氏は福祉の財源を削減して、それをBIに充当しようとするツイートも書いていますので、負の所得税への志向性もあるのでしょう。しかし、両者は根本的に考え方が異なりますので、両者を混濁している点に疑問が残ります。

詰まるところ、流行りモノに飛びつくばかりで、橋下氏が何を目指しているのかよく分からないように見えます。私たちの資源を個人に移すというBIの原点に立ち返って、そこから全体の構想を練っていただきたいと願います。そこに立ち返れば、中央省庁や大企業に資源を集中させてきたこれまでの我が国の体制を転換することにつながり、BIは脱原発や地方分権を推進する上での大きな力になることでしょう。

 

追記:ヤフー「みんなの政治」でも取り上げてもらいました

Yahoo!みんなの政治 - 無条件で最低生活保障「ベーシック・インカム」とは

 

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