BIメールニュースNo.066  2010.09.25発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.066  2010.9.25発行

【1】『ベーシックインカムと労働についての小論』      橋口昌治

【2】「基礎所得保障(ベーシック・インカム)を考える掲示板」のご紹介

【3】BIニュース

POSSEVOL.8で「特集 マジでベーシックインカム!?」

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】『ベーシックインカムと労働についての小論』      橋口昌治

ベーシックインカム(BI)の重要な性格の1つは、就労と所得を切り離すという点にある。基本的に人間の歴史において、労働は自由の対極のように見なされてきた。賃労働によって封建遺制からの自由が実現したという側面もあったであろうが、労働者は資本家からの新たな支配を受けることになった。だから、働かなくても生きていけるということが人々の自由に与える影響は大きいであろう。

しかしBIが導入されても、人類全体が労働から自由になるわけではない。BIによって実現すると考えられている労働からの自由は個人レベルの話だからである。当たり前のことであるが、誰かが働かないといけないのである。だからBI導入後の労働がどのような状況になるのか、時々想像することがある。

例えば、機械化が進めば働かなくてよくなるという考えがある。しかし少なくとも資本主義経済においてそれは難しい。なぜなら機械がするよりも人間がした方が安く済む作業については機械化されないからである。また資金をかけて機械化された場合、その資金を回収するために長時間機械を動かす必要が出てくる。

だから機械化が進められても、単調な作業を長時間続けるオペレーターが新たに雇われるだけでなく、複数の機械について生産管理を行うマネージャーも必要となる。この延長上にBI後の労働のあり方を想像するとどうなるのであろうか。

BI体制を支えるために、(高賃金だが?)単調な仕事に耐える人々が出てくるかもしれない。あるいは競争がなくなり、歌を歌いながら機械と協働して物を作る文化でもできるかもしれない。しかしそのとき現在のような生産性は保てるのだろうか。それでもいいと言えるが、制度設計上の許容範囲を超える場合もあるだろう。

だからやはりBI導入されても、誰かが望まない仕事をしたり、望まない強度・速度で働いたりすることになる可能性は否定できない。「それは人気のない仕事の賃金が上がることで市場が調整してくれる」とする市場メカニズムに基づく考え方もあるが、実際の職場は細かい調整の必要な場であり、市場に任せるだけでうまくい

くのか疑問である。

一方で、BIの導入によって、万が一そのバーターで解雇自由が導入されれば、思い入れのある仕事から一方的に排除される可能性もある。「金銭的に生活が保障されていれば、仕事を失うことに誰も不満を持たなくなる」とするBI支持派の見解は安易ではないだろうか。というのも、労働という行為は身体と精神を使うがゆえに、喜びも含めて人間にねっとりとまとわりついているからである。そうした労働からの自由は、所得保障によって実現するのであろうか。

私は、たとえBIが導入されても、労働をめぐる問題は人類の課題として残ると想像している。

橋口昌治

ユニオンぼちぼち執行委員長。立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー。橋口昌治・肥下彰男・伊田広行著『<働く>ときの完全装備──15歳から学ぶ労働者の権利』(解放出版社)

【2】「基礎所得保障(ベーシック・インカム)を考える掲示板」のご紹介

地味ながらも、しかも、関曠野さんが登場していたこともあって、反論も含めて個々の議論の水準が高く、ベーシックインカムが広く知られるようになる前から、ずっと運営されている掲示板があります。

基礎所得保障(ベーシック・インカム)を考える掲示板

http://basicincome.progoo.com/bbs/tree_1.html

今年の夏ごろから低調気味なので、ぜひどなたかトピックを設けて、議論が活発になっていくといいなと思います。涼しくなったので、学問の秋というわけではありませんが、ぜひご参加下さい。

【3】BIニュース

POSSEVOL.8で「特集 マジでベーシックインカム!?」

新たなヴィジョンを拓く労働問題総合誌POSSEのVOL.8で「特集 マジでベーシックインカム!?」が掲載されています。

http://npoposse.jp/magazine/new.html

概要は下記にあるように、賛成論者3人、反対論者3人から、それぞれの意見を掲載しています。

特集 マジでベーシックインカム!?

  • 東浩紀(批評家・作家)

    情報公開型のBIで誰もがチェックできる生存保障を

    多様な「生」を認める社会の「究極のサービスプラットホーム」とは

  • 飯田泰之(駒澤大学准教授)

    経済成長とBIで規制のない労働市場をつくる

    ルールに基づいた最低限のセーフティネットで「結果の平等」を保障するために

  • 小沢修司(京都府立大学教授)

    BIと社会サービス充実の戦略を

    新自由主義のBI論を警戒しつつ、共闘するための方法とは

  • 萱野稔人(津田塾大学准教授)

    ベーシックインカムがもたらす社会的排除と強迫観念

    「労働からの解放」?「パターナリズムの克服」?BI論者がさらけ出した国家と資本主義への無理解とは

  • 後藤道夫(都留文科大学教授)

    「必要」判定排除の危険

    ―ベーシックインカムについてのメモ

    「無条件」の所得保障こそが生存をおびやかす!そして、多様化する時代の新しい福祉国家とは

  • 竹信三恵子(朝日新聞編集委員)

    なぜ「働けない仕組み」を問わないのか

    ~BIと日本の土壌の奇妙な接合 女性の職場は「いまのままでいい」!? 共感を呼ぶ「現状肯定」のメッセージ

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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