BIメールニュースNo.076  2010.12.04発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.076  2010.12.04発行

【1】『メンテナンス経済に向けて (最終回)』      関 曠野

【2】BIニュース

ノースダコタ州立銀行の紹介記事などを翻訳しています

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】『メンテナンス経済に向けて (最終回)』      関 曠野

それでは成長からメンテナンスに経済の原則を転換させるためには、それを理念や理想として掲げ世に訴えることが必要なのだろうか。否、そんな必要はない。この転換はすでに始まっており、我々の周囲でどんどん進行している。経済が今の状態では大方の人は節倹に努め、耐久消費財などは手持ちのものを大事に長く使うつもりではなかろうか。筆者も十八年乗ったロードレーサーを先日オーバーホールした。これでまた十年以上乗れる。

ローマ帝国の末期、国家の体制が解体する中で従来の奴隷は次第に家族と財産をもった小作人(コロヌス)に変貌し、やがて小作農制が西欧の中世文明の土台になった。これは民衆の生活防衛のための反応が徐々に積み重なって生じた変化だった。成長からメンテナンスへの経済の転換も似たような形で、理念や理想なしに生活防衛の知恵として生じる筈である。だが節倹は消費を低迷させデフレを長引かせる原因だと非難される。では今のデフレは打開できるものなのか。世界の金融資本は人類社会全体のGDPの十四、五倍といわれる天文学的負債に押し潰されており、銀行マネーは最終的に崩壊している。それにピーク・オイルの問題がある。国際エネルギー機関(IEA)は十一月に世界の原油生産は2006年にピークを越したとみられると発表した。世界経済のガス欠状況は今後は深刻化する一方なのだから景気の回復、経済成長の再始動など絶対にありえない。

インフレはなけなしの給与や貯蓄に頼る経済弱者には打撃となる。だが物価が下落するデフレは銀行や大企業には打撃だが、貧乏人にはむしろ恵みである。ただし貧乏でもそれなりの所得や貯蓄があればの話だ。だから万人にベーシック・インカムが保証されるなら、永続するデフレは飽くなき消費から生活の質と不安なき充足に文明の価値が転換する好機となるだろう。

そしてデフレが続くと経済生活の重心は企業から家庭と地域に移ってくる。今アメリカで家庭菜園や都市農園が広まっているのもその徴候である。政府通貨による基礎所得の保証はこうした移行を加速化させ、メンテナンス経済に制度的な枠組みを与える。いずれ人々はこの制度を生活の知恵として受け入れるだろうと期待している。さもなければ銀行マネーの終焉、租税国家の解体の中で世界は物々交換の原始経済に戻るしかなくなるからである。     (了)

<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)

1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。

講演録

http://bijp.net/transcript/article/27

質疑応答

http://bijp.net/transcript/article/79

【2】BIニュース

ノースダコタ州立銀行の紹介記事などを、本邦初翻訳しています

ベーシックインカムを実現するには、財源論の壁がありますので、通貨や銀行についての考え方を柔軟にしておく必要があります。その際に参考になるのが、アメリカ、いや世界でも唯一であろうノースダコタ州立銀行です。

ノースダコタ州立銀行は、ノースダコタ州が所有・経営する銀行で、FRBのような通貨発行機能はありませんが、連邦準備金制度の支局に期待されるような小切手処理などの多くの機能を有しているなど、中央銀行に類似しています。その一方で、学生ローン、事業発展ローン、そして州と各地方自治体が発行する債権も保証するなど、州立銀行というコンセプトらしいきめ細かな事業も営んでいます。

下記は、本邦初翻訳のノースダコタ州立銀行に関する記事です。AAに格付けされていて、利益の26%を州に還元していて、そのおかげでこの恐慌期に州財政は黒字であるとか、株主資本利益率が25~26%であるなど、驚異的なパフォーマンスを挙げていて、それこそハゲタカファンドも瞠目するような記事が並んでます。

逐次翻訳をアップしていきますので、実現を探る会のホームページでもお知らせします。

ノースダコタ銀行

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%80%E3%82%B3%E3%82%BF%E9%8A%80%E8%A1%8C

どのようにして国内唯一の州立銀行がウォール街に羨まれるようになったのか?

http://wtr000.blogspot.com/2010/12/blog-post.html

How the Nation’s Only State-Owned Bank Became the Envy of Wall Street

http://motherjones.com/mojo/2009/03/how-nation%E2%80%99s-only-state-owned-bank-became-envy-wall-street

通貨の新たな理論のとき

http://wtr000.blogspot.com/2010/11/blog-post.html

Ellen Hodgson Brown: Time for a New Theory of Money

http://www.atlanticfreepress.com/news/1/13877-ellen-hodgson-brown-time-for-a-new-theory-of-money.html

  • マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』DVDでノースダコタ銀行が紹介されて一部がYouTubeにも公開されています。

    Michael Moore's 'Capitalism: A Love Story' DVD Extra Preview

    - Bank of North Dakota

    http://www.youtube.com/watch?v=KX8pcADnsEs

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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