BIメールニュースNo.089 2011.3.12発行
【1】同床異夢のBIの未来は? 鎮目 真人
【2】ブラジルの「市民ベーシックインカム法」の邦訳をご投稿頂きました
【3】BIニュースフランスのドミニク・ガルゾー・ド・ビルパン元首相が「市民所得」を提案
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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。
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【1】同床異夢のBIの未来は? 鎮目 真人
去る2月の末、混乱に揺れるリビアのカダフィ大佐が物価高騰に対する救済策として全世帯への現金500リビア・ディナール(約3万3000円)の一律支給を打ち出した。これは、継続性という点を除けば、形としてはBIに似ていなくもない。カダフィがこうしたバラマキを行うのは、言うまでもなく、国民の革命的運動を抑える懐柔策であり、体制維持を目的にしてのことだろう。
そもそも、BIの目的は多様だ。例えば、BIには新自由主義者が主張する右派リバタリアン的BIや環境主義者や福祉国家主義者などが主張する左派リバタリアン的BIなど色々なバリエーションがあるというのはよく知られている。
右派リバタリアンがBIを推すのは、負の所得税や給付つき税額控除によって労働インセンティブを阻害せずに労働市場が歪みなく機能することを期待してのことだろう。既存の福祉給付をBIに押し込めて、それによって「小さな政府」を実現することが最終目的だと考えられる。他方、左派リバタリアンによるBIの目的は、家事労働などのアンペイドワークや障害者運動が主張する生存=労働に対する補償、生産・消費至上主義的な社会メカニズムの是正、環境資源や人類遺産などに対する自然権の保障など多様だ。
BIの目的はこのように多様なため、BIだけでは問題の解決にならない、他の政策と合わせて一つのパッケージ単位で捉えないとダメだといった話になる。皆で同じ寝床に寝ていてもみる夢が違うと、夢が実現した後が大変かもしれない。思い描いていた夢と違って、こんなはずじゃなかったと皆が嘆き悲しむことにもなりかねない。
だが、多様な目的を達成する共通な手段の一つとしてBIが存在しているということはやはり興味深い。義務教育もかつては古代ギリシアのスパルタで行われた軍事教育、ルター派による宗教教育など色々な目的から始まった。日本でもいわゆる教育勅語による軍国主義教育は記憶に新しい。義務教育をめぐる多様な思惑は今日でも色々な場面で問われ続けているが、その存在自体に疑問を投げかける声は少ない。BIもそのようになっていくのかもしれない。
プロフィール鎮目真人(しずめ まさと)立命館大学産業社会学部教員。専門は年金を中心とした社会保障論。
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200901042940823229
【2】ブラジルの「市民ベーシックインカム法」の邦訳をご投稿頂きました
先週のメールニュースで、ブラジルの「市民ベーシックインカム法」の翻訳を募集したところ、ブラジル語が分かる方で、しかも官庁にお勤めの方から、法律の条文に沿った形で翻訳してご投稿頂きました。 http://bijp.net/data/article/249
非常に良い翻訳であると判断いたしましたので、実現を探る会のホームページに掲載させていただきました。『VOL』02にもこの法律の翻訳が掲載されていますので、あわせてご参照いただければと思います。
『VOL』02概要
http://www.arsvi.com/m/vol002.htm
【3】BIニュースフランスのドミニク・ガルゾー・ド・ビルパン元首相が「市民所得」を提案
2012年のフランス大統領選挙の候補者でもあり、元首相でもあるドミニク・ガルゾー・ド・ビルパン氏が、テレビ番組の中で「市民所得(revenu citoyen)」を提案しました。
動画:Villepin pour un revenu citoyen(ビルパンは市民所得に前向きである)
http://www.youtube.com/watch?v=EXWvjdn03vA
その後、3月1日に仏リベラシオン紙に掲載(PDFファイル)
http://www.grundeinkommen.de/content/uploads/2011/03/villepin_rdb1.pdf
http://www.grundeinkommen.de/content/uploads/2011/03/villepin_rdb_2.pdf
ただ、現時点ではあまりにも情報が少ないため、彼の意図がどこにあるのかは、いま一つはっきりしません。
この動画をめぐるFacebookでの議論では、月額850ユーロの現金給付は、贅沢はできないが最低限度の生活をするには十分である点は評価できるが、無条件で給付されないのではないおそれがあり、およそベーシックインカムと言えるものではないという指摘もあります。
Facebookでの議論
「尊厳ある暮らしを可能にする850ユーロという水準で現金給付することは、生活苦や貧困にあえぐすべての人にとっていい話である。」というド・ビルパン氏自身のコメントがあったため、必ずしもベーシックインカムを意味しないのではないかとの見方が有力です。もちろん、選挙前のリップサービスと見ることも可能でしょう。
フランスには積極的連帯所得(RSA)という制度が2009年に創設され、生活保護に安住するのではなく労働へと促すワークフェアの方向性が出ていただけに、これとの整合性はどうなるのかという懸念もあります。
残念ながら、編集長はフランス語が分かりませんので、動画であっても新聞記事であっても、どなたか概略でも構いませんので翻訳してくださる方がおられると助かります。
ドイツでは、さっそくこの動きを分析した記事が2本上がっていますので、これに関しては編集長が取り組んでみたいと思います。
Dominique de Villepin:“Ich schlage die Schaffung eines Burgereinkommens vor.”(ドミニク・ド・ビルパン「私は市民所得創設を提案する」)
Grundeinkommen in Frankreich - bedingungslos?(フランスのベーシックインカム-これは無条件なのだろうか?-)
参考資料ウィキペディアでのド・ビルパン元首相の記事
RSA
http://fr.wikipedia.org/wiki/Revenu_de_solidarit%C3%A9_active
RSAを解説する記事
http://d.hatena.ne.jp/hirokim21/20090602/1243913821
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