BIメールニュースNo.050  2010.06.05発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.050  2010.6.5発行

【1】『メンテナンス経済に向けて (二)』     関 曠野

【2】BIニュース

『現代思想』2010年6月号がベーシックインカムを特集しています

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】『メンテナンス経済に向けて (二)』

関 曠野

経済学では現存する富を量として捉える。その視点に立つと、ある時点で静止状態で捉えられた富がストック、一定期間の間に変化する量として捉えられた富がフローである。だから例えば今この時点での日本の森林全体はストックであり、一年の間に伐採され木材として売られた部分はフローである。

そしてストックは磨耗や劣化によって絶えず減少するから、フローの拡大によってその減少を補わねばならない。してみるとフローをどんどん拡大することこそ「富の創造」だということにならないか。あれこれの流派の経済学は基本的に量の視点からフローを論じる学問であり、経済成長やGDPもフローに相関した概念である(それゆえに経済学者はデフレで成長が止まり麻痺状態になった経済を理論的にうまく説明できない)。

だがここで経済学の考え方に疑問が生じてくる。まず第一に、人間の素朴な幸福感はフローよりもストックに関係しているのではなかろうか。がむしゃらに働いて所得=フローが少々増えることより、なけなしの収入を割いて手に入れた好きな作家や歌手や画家の作品のコレクション、デザインが気に入っている食器や服、小さくても住み心地のよい住居などが人間に幸福を感じさせるものなのではないか。そして量の学問である経済学に文句をつけても仕方ないのだが、人々の現実の日常生活はストックとフローの二分法で割り切れるようなものではない。大抵の人はその持ち物をまめに手入れして長持ちさせるよう心がける筈である。

経済学はこのストックのメンテナンスという自明の事柄を見落とす。ストックは経済学が言うようには一律に減少することはないのである。アメリカに経済封鎖されたキューバでは今でも1950年代の車が町を走っている。手入れ次第で物は驚くほど長持ちするものなのだ。そしてメンテナンスが重視される社会では商品を大量生産する必要はない。公共事業でも既存の橋や道路のしっかりした維持管理が課題とされるだろう。こうして質が高く耐久性のある物を少しだけ作り、それらを大事に維持し保全することが将来の脱石油社会における経済の基本になるだろう。

(続く)

<関 曠野 氏 プロフィール>(第一土曜日執筆)

1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。

講演録

http://bijp.net/transcript/article/27

質疑応答

http://bijp.net/transcript/article/79

【2】BIニュース

『現代思想』2010年6月号がベーシックインカムを特集しています

『現代思想』2010年6月号がベーシックインカムを特集しています

http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%D9%A1%BC%A5%B7%A5%C3%A5%AF%A5%A4%A5%F3%A5%AB%A5%E0%A1%A1

このメールニュースでおなじみの関曠野さん、日本のベーシック・インカム論者のパイオニアであり「ベーシックインカム・実現を探る会」において講演してくれた小沢修司さん、そして、山森亮さんや立岩真也さんなど、ベーシック・インカム関連書籍の執筆者であり、しかも過去にメールニュースで執筆してくれた顔ぶれが並んでいます。

これに対して、日本における最も有力なベーシック・インカム反対論者である濱口桂一郎氏も早速書評を記しています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-41d5.html

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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛

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