BIメールニュースNo.007  2009.08.01発行 バックナンバー

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BIメールニュースNo.007  2009.08.01発行

1 『大恐慌の教訓 (上)』          関 曠野(第一土曜日執筆)

2 講演『ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換』をまとめてくださった方の紹介

3 BIニュース “新党日本のベーシック・インカムの発言”


1 『大恐慌の教訓 (上)』

関 曠野(第一土曜日執筆)


さすがに近代ジャーナリズムの老舗だけあって、英国の新聞にはタフな事実尊重の精神があるようだ。フィナンシャルタイムズ紙やテレグラフ紙はかなり前から目下の経済危機の報道や論評で「恐慌」depressionという言葉を使っている。そしてグラフなどを用いて危機の成り行きが1930年代の大恐慌に酷似していることを読者に示している。相変わらず「不況」でお茶を濁している日本の新聞とは大違いである。

テレグラフ紙ウェブサイト

http://www.telegraph.co.uk/

ところで30年代大恐慌に関しては、ローズヴェルトのニューディールにはせいぜい鎮痛剤の効果しかなく世界大戦へのアメリカの参戦が恐慌を終わらせたという点では研究者の見解はほぼ一致している。だが不思議なことに、なぜ戦争が恐慌を終わらせたのかを解明した書物を私は見かけたことがない。戦争は政府の負債を膨れ上がらせる破壊と殺戮のための投資だから経済にはプラスにならない。アメリカの金融危機もイラクとアフガンでの戦争による出血に無関係ではない。技術革新という副産物があるかもしれないが、市場の活気や潤沢な資金なしには軍事技術の平時転用も進まないだろう。

だが視点を変えれば戦争の経済効果は明確に説明できる。国民総動員の総力戦体制は男は徴兵、女は銃後の工場で労働という形で一時的に完全雇用を実現する。その一方豊かなアメリカでも多くの物資が配給制になり庶民は家庭菜園で食料を一部自給するほどだった。こうした耐乏生活は人々の間に充たされぬ欲望を鬱積させる。それゆえに戦禍を免れたアメリカでは、平和の回復と同時に雇用による所得に裏打ちされた有効需要が爆発したのである。恐慌を終わらせたのは国民戦争の所得保証効果にほかならなかった。しかし戦後の先進諸国はこの教訓から学ぶことがなかった。そして戦争の所得保証効果によって窮地を脱したアメリカ人は少数の反戦派以外は戦争に抵抗感がない国民になってしまった。してみれば大恐慌が戦争につながった主な原因は貿易戦争などでなく、当時の政治家たちが雇用による所得に執着したことなのである。そして雇用の確保や拡大が政治を評価する尺度であるならば、30年代のもっとも傑出した政治家はドイツのヒトラーだったことになるだろう。

〈関 曠野 氏 プロフィール〉(第一土曜日執筆)

1944年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業後、共同通信社記者を経て1980年より文筆業に専念。専門は思想史、教育論。著書に『プラトンと資本主義』『ハムレットの方へ』(共に北斗出版)、『民族とは何か』(講談社現代新書)など。

2009年3月8日の当会主催の勉強会で「生きるための経済」を講演。

講演録

http://bijp.net/transcript/article/27

質疑応答

http://bijp.net/transcript/article/79


2 講演『ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換』をまとめてくださった方の紹介


第3回 ベーシック・インカム(基礎所得保証)入門の集い ベーシック・インカムのある社会 労働と教育の根本的転換

http://bijp.net/newsinfo/article/26

今回も多数の参加者に恵まれ、盛会のうちに終了することができました。ありがとうございました。

近日中に今回の講演録をアップいたしますので、参加された方も、参加されなかった方も楽しみにお待ちください。

なお、講演の様子をアップされた方がおられます。

scotch *scratch*さん

http://www.scommunity.net/scratch/2009/07/12_basic-income-furuyama1/

http://www.scommunity.net/scratch/2009/07/12_basic-income-furuyama2/

さらに、講演会の要点を1枚のパンフレットにまとめて下さった方もおられます。

http://hellosanae.net/basicincome.pdf

講演録がアップされるまで、そちらをご覧ください。


3 BIニュース

“新党日本のベーシック・インカムの議論”


ベーシック・インカムについてもっとも踏み込んで発言しているのは、参議院に1議席しか持たない小党のために国会での発言はまだないようですが、新党日本です。党首の田中康夫氏が2009年衆院選に兵庫8区から出馬することになり、さらにベーシック・インカムをマニフェストに掲げたことで話題を呼んでいます。

田中康夫氏、兵庫8区から出馬を正式表明

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090724-OYT1T00721.htm

全国民に「最低生活保障」 新党日本が公約公表

http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009073101000702.html

新党日本では、他党に於けるマニフェストに当たる『日本「改国」宣言』を、8月6日(木)に公開し、HPにも掲載します。なお、その概略に関し、7月31日(金)にリリースしました。

http://www.love-nippon.com/2009manifesto.htm

新党日本のホームページでは、ベーシック・インカムについての情報が下記のアドレスにまとめられています。

http://www.love-nippon.com/basic.htm

その中でも、党首の田中康夫氏は、2009.03.08に開催された関曠野氏の講演を聴いていたのですが、その内容を受けて「国民配当」という考え方を、これから使い続けることになります。

ベーシック・インカムの実現を! 出演:田中康夫・有田芳生(2009.03.12)

音声ファイル

http://www.love-nippon.com/radio/09.03.12.mp3

文字

http://www.love-nippon.com/6_moji_radio.htm#59

関曠野氏の講演録

http://bijp.net/transcript/article/27

副党首の有田芳生氏も、下記にベーシック・インカムについて取り上げています。

有田芳生の『酔醒漫録』: 「ベーシック・インカム」(基本所得)構想(2009/02/06)

http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2009/02/post_a69c.html

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