BIメールニュースNo.008 2009.08.08発行
1 『地域通貨とベーシックインカム』(第2回)今井啓子(第二土曜日執筆)
2 ネットでのベーシック・インカム議論が活発になってきました
3 BIニュース “衆院選各政党の選挙公約(マニフェスト)に見るBI”
1『地域通貨とベーシックインカム』(第2回)
「貨幣にも生と死が」
べーシックインカム・実現を探る会 メンバー 今井啓子
「自然界のものと同じように、人間が作ったお金も朽ちていくようにしなければならない。」
ミヒャエル・エンデ氏が語るこの言葉を、減価する仕組みにしている地域通貨「花」(以下「花」と略す)の説明をするたびに何万回も繰り返してきた。減価しないうちに使おうとするので、溜め込まないから流通するという訳だ。有名な例が1932年に発行されたオーストリアの地域通貨「ヴェルグル」である。
「花」のやり取りを始めて、8年になろうとする。その間にはいろいろな事があった。大福帳システムにプラスして紙幣「花券」を途中で導入した(考案は、ゲゼル研究会主宰森野栄一氏による)。
ゲゼル研究会 http://www.grsj.org/
幸いデザインのセミプロの方がいて素敵な「花券」ができた。参加費に「花」が使える講演会などの催しをした。「花仲間」で集まってゆっくり話したい時など、決まって、「花」利用ができる「花仲間」のお店「ひじかた園 2階喫茶室」に集まる。
ひじかた園 http://www.hijikataen.com/
ところで、地域通貨「花」を利用していて発見したことがある。90歳のご高齢の方がおられたのだが、この方は「花」で頼む事ばかりになり、通帳のマイナス残高が多くなるばかりなので、返せないので悪いから使いたくないとおっしゃったのだ。「高齢の方々に使っていただきたいのに、これじゃ変だ」と思い、いろいろ考えを巡らした。すると、「花」のメンバーになった時の年齢によって、「してあげる事」「してもらう事」の内容や量が大きく違ってくることに気がついた。つまり、若い時に「花」に出会った人は、いろんな仕事や物と「花」が交換できるからいいけど、高齢者になってから出会った人は、できる事が少なくやってもらいたいことが多くなるので、「花」を使うのに遠慮がちになるということだ。
しかし不思議な事に、青年も高齢者の方も、いつ病気になるか寿命が来るのかわからないのだ。そう考えていくと、年齢に関係なく通帳のマイナスを気にすることなく、その時できることを「してあげればいい」、できないことを「してもらえばいい」ということになる。「花」がたくさんたまった人は寄付したり、贈与したりすればいいのだ。
また、その方が亡くなったら、自然界の花が朽ち果てるように、「花」もゼロになるわけであり、90歳の高齢の方がマイナスを持っていたとしてもゼロになるのである。それは、地域通貨が自然界の仕組みに沿っているから可能な事柄なのだ。
地域通貨「花」
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〈今井啓子氏 プロフィール〉 (第二土曜日執筆)
東京生まれ。夫・娘・息子の4人家族。1999年NHK・BS番組『エンデの遺言』に出会い、地域通貨『花』を使う活動『まちだ大福帳』を始めて現在に至る。「ベーシックインカム 実現を探る会」メンバー
2 インターネットでのベーシック・インカム議論が活発になってきました
新党日本がマニフェストにベーシック・インカムを加えたことや、ホリエモンこと堀江貴文氏がブログにベーシック・インカムを3日連続で取り上げたこともあり、インターネット上でのベーシック・インカムの議論が急に活発になってきました。
堀江氏の記事
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10308808731.html
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10309923304.html
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10312792181.html
成毛眞ブログ
「ベーシックインカム制度は成立するか」ザックリと計算してみました
http://d.hatena.ne.jp/founder/20090803/1249273891
金融日記:ベーシックインカムの財源
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51562616.html
このように、ベーシック・インカムの議論を活発に行うことはベーシック・インカム理解の裾野が広がります。今後も活発な議論が行われることを望みます。
ベーシック・インカムに関して最も重要な財源論は小沢修司氏のもので、『福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平』などで検討されていて、所得税が財源となります。例えば'08年度、総所得総額は約257兆円ですので、45%の所得税で115兆円を捻出できます。
http://bijp.net/studybi/article/21
さらに、7月12日に当会が開催した「第3回ベーシック・インカム入門の集い」で古山明男氏が「e\(イー・円)」という減額する電子通貨を用いてベーシック・インカムを実現する可能性をシミュレーションしています。近日中に講演録を公開しますのでご期待ください。
そして最も根源的なベーシック・インカム論は、当会が3月8日に開催した「第2回ベーシック・インカム入門の集い」で関曠野氏が提起した、公共通貨と正当価格をベースとしたベーシック・インカム論です。公共通貨を用いれば財源論は不要とする根源的な理論です。
関氏が「ベーシック・インカムは理性と良識に基づく超党派のポリシーでなければならない。」と言うように、これからも超党派による理性と良識に基づく活発な議論を望みます。
3 BIニュース
“衆院選各政党の選挙公約(マニフェスト)に見るBI”
8月30日の衆議院選挙に備え、各政党が選挙公約を発表しました。政党によっては、まだ正式版が発表されていないところもありますが、現時点での選挙公約から分かる各政党のベーシック・インカム、負の所得税、給付付き税額控除への言及を、言及度の深さ順にご紹介します。
- 新党日本
ベーシック・インカムを明記。
『日本「改国」宣言』
http://www.love-nippon.com/2009manifesto.htm
- 公明党
公明党:manifesto '09 重点政策から
http://www.komei.or.jp/policy/policy/pdf/manifesto09.pdf
公明党は「給付付き税額控除」の表現が4箇所。
個人単位の給付か世帯単位の給付かについての言及はありません。
「『社会保障カード』(仮称)の早期導入を進めます。これにより、年金・医療・介護など社会保障にかかる個人の情報取得を容易にし、また税制と社会保障制度の一体的な運営の強化を図ることにより、給付付き税額控除制度や『利用者負担総合キャップ制度』(仮称)の実現を図ります。」
という記述もあり、個人単位での給付も想定している可能性があります。
- 社民党
衆議院選挙公約2009・概要版 Manifesto(第一次案)
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/election/manifesto01.htm
「再建8 税財政 大企業・金持ち優遇の不公平をただす
- 低所得者、子育て世帯に対する給付付き税額控除制度(所得税の減額と給付金の支給を組み合わせて生活を支援する仕組み)を検討します。」
低所得者は個人単位、子育て世帯は世帯単位であることが予想されます。
- 民主党
民主党の政権政策Manifesto2009
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/pdf/manifesto_2009.pdf
民主党政策集INDEX2009
http://www.dpj.or.jp/news/files/INDEX2009.pdf
民主党政策集INDEX2009に「給付付き税額控除」が記載されていましたが、マニフェストには記載されませんでした。「給付付き税額控除」についても、個人単位か世帯単位かが明記されていませんでした。「給付付き消費税額控除」「就労を促進する給付付き税額控除」という文脈で取り上げられていました。
(19~20ページ)
- 自民党
要約版(PDF:2.73MB)、政策BANK(PDF:4.89MB、重たくて開きづらい)
http://www.jimin.jp/sen_syu45/seisaku/index.html
「子育て等に配慮した低所得者支援策(給付付き税額控除)を行う」
個人単位というよりは、子育て世帯単位の給付が想定されます。
- 共産党:記述なし
日本共産党の総選挙政策 2009年7月28日
http://www.jcp.or.jp/down/bira/09/pdf/20090728_seisaku_p.pdf
- 国民新党:記述なし
緊急提言―平成経済恐慌をいかに打開するか―
http://www.kokumin.or.jp/seisaku/pdf/keizai-20090324.pdf
- 改革クラブ:記述なし
http://www.kaikakuclub.jp/pdf/manifest.pdf
- 新党大地:記述なし
http://www.muneo.gr.jp/bira_omote_b.html
http://www.muneo.gr.jp/bira_ura_b.html
- 幸福実現党:記述なし
http://www.hr-party.jp/pdf/090730manifesto.pdf
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発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛
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