BIメールニュースNo.132 2012.1.28発行
【1】震災復興BI院内集会以後…個人的な雑感 白崎朝子
【2】おんなたちはつながる~~原発をめぐる福島の状況
…福島・ハイロアクション・武藤類子さん講演会
【1】震災復興BI院内集会以後…個人的な雑感 白崎朝子
昨年9月。『ベーシックインカムとジェンダー』のあとがきを書くため、私は思い出深い海辺に向かった。バスを降り立った瞬間、曇っていた空が、一瞬で晴れ、煌めく海の波光を眺めていた。そんな時に、9・19脱原発集会での福島の武藤類子さんのスピーチのメールが届いた。 その素朴で力強いスピーチに強く心を揺さぶられた。
『魂の言霊』。
柔らかく、でも力強い言葉。こんな言葉を紡ぐ武藤さんに会いたい、つながりたい…と思った。武藤さんからは、すぐに講演のご快諾を頂いた。 私は1980年代前半、反原発運動をしていた。当時は今以上に原発の安全神話がまかり通り、デモをしても300人も集まらない厳しい状況だった。原発はいつも雇用のない海辺の過疎に押し付けられてきた。私がBIという理念に出会った時、BIに可能性を感じたのは、もちろんシングルマザーやケアワーカーの立場からの要求だったが、原発労働者がホームレスになっている現状や、原発が常に貧しい過疎に押し付けられていることとも無関係ではなかった。
脱原発は経済構造や社会保障制度の改善とセットでなければ達成できない。院内集会の総括をまだ言語化できない私ではあるが、ロビー活動も含めて頑張った院内集会の総括を出すには、いま一番BIが必要であろう福島に住む人たちの話を傾聴する必要があると思っている。
武藤さんのメッセージから、自身の昨年の運動のあり方を内省し、新しい方向性を模索したい。今回、私や仲間が企画した武藤さんの講演会はBIを要求する集会ではない。だが私の中では、被災地にBIを要求した院内集会からの連なりとして位置付けられている。
福島はじめ被災した人々に、BI推進派はBIをどのように伝えうるのだろうか…BIを推進してきた研究者や、推進派の本気度と説得力が試されるのは、むしろこれからではないかと思っている。(了)
<白崎 朝子 氏 プロフィール> 介護福祉士・ライター。著書『介護労働を生きる』(現代書館、2009年年)。共著『ベーシックインカムとジェンダー~~生きづらさからの解放に向けて』『季刊福祉労働』(現代書館)、『世界』(岩波書店)、『週刊金曜日』、『シルバー新報』等に執筆。
震災復興BI院内集会関連資料
第1回震災復興基礎所得保障と生活再建のための現物支給を政府に要求する院内集会・資料①
第1回震災復興基礎所得保障と生活再建のための現物支給を政府に要求する院内集会・資料②
第1回震災復興基礎所得保障と生活再建のための現物支給を政府に要求する院内集会・英語版要約
第2回院内集会開催のご案内
【2】おんなたちはつながる~~原発をめぐる福島の状況 福島・ハイロアクション・武藤類子さん講演会
☆☆おんなたちはつながる~~原発をめぐる福島の状況…福島・ハイロアクション・武藤類子さん講演会☆☆
●2012年2月26日(日)午後13:30~16:30
●世田谷区経堂地区会館2階集会室(小田急線経堂駅徒歩7分くらい)
電話~03-3428-9237東京都世田谷区経堂3-37-13
※バリアフリーの会場を取る努力をしましたが、倍率が高く取れませんでした。車椅子などサポートが必要な場合は連絡先まで御一報下さい。
●参加費…1000円
※シングルマザーなどのビンボーウーマン3人による企画のため、みなさまからの参加費だけが頼りの講演会です。経済的に困難な方は受付時にご申告下さい。減額致します。また、武藤さんたちハイロアクションへのカンパもよろしくお願い致します。
●主催:小田急線ベーシックインカムシスターズ&ベーシックインカムを考える会
●協賛:安全な労働と所得保障を求める女性介護労働者の会
…昨年の9・19脱原発集会での武藤類子さんのスピーチは、たくさんの人々の魂を揺さぶりました。そんな武藤さんをお招きし、もうすぐ原発事故から一年になる福島の現状や、今の想いを語っていただき、これから私たちに何ができるのか、つながりゆくための模索のヒントをいただけたらと思っています。
●当日会場で、武藤さんのご著書『福島からあなたへ』(大月書店・1200円)も販売致します。
以下は「どうしても武藤さんに会いたい!」と強く思って企画するきっかけになった9月19日の武藤さんの集会スピーチです。
★9・19「さようなら原発集会」~6万人が参加:武藤さんのスピーチは36:35~です。
みなさんこんにちは。福島から参りました。今日は、福島県内から、また、避難先から何台ものバスを連ねて、たくさんの仲間と一緒に参りました。初めて集会やデモに参加する人もたくさんいます。福島で起きた原発事故の悲しみを伝えよう、私たちこそが「原発いらない」の声をあげようと、声をかけ合いさそい合ってこの集会にやってきました。
はじめに申し上げたい事があります。3・11からの大変な毎日を、命を守るためにあらゆる事に取り組んできたみなさんひとりひとりを、深く尊敬いたします。それから、福島県民に温かい手を差し伸べ、つながり、様々な支援をしてくださった方々にお礼を申し上げます。ありがとうございます。
そして、この事故によって、大きな荷物を背負わせることになってしまった子供たち、若い人々に、このような現実を作ってしまった世代として、心からあやまりたいと思います。本当にごめんなさい。
みなさん、福島はとても美しいところです。東に紺碧の太平洋を臨む浜通り。桃・梨・りんごと、くだものの宝庫中通り。猪苗代湖と磐梯山のまわりには黄金色の稲穂が垂れる会津平野。そのむこうを深い山々がふちどっています。山は青く、水は清らかな私たちのふるさとです。
3・11原発事故を境に、その風景に、目には見えない放射能が降りそそぎ、私たちはヒバクシャとなりました。
大混乱の中で、私たちには様々なことが起こりました。すばやく張りめぐらされた安全キャンペーンと不安のはざまで、引き裂かれていく人と人とのつながり。地域で、職場で、学校で、家庭の中で、どれだけの人々が悩み悲しんだことでしょう。毎日、毎日、否応無くせまられる決断。逃げる、逃げない? 食べる、食べない?洗濯物を外に干す、干さない? 子どもにマスクをさせる、させない? 畑をたがやす、たがやさない? なにかに物申す、だまる?さまざまな苦渋の選択がありました。
そして、今。半年という月日の中で、次第に鮮明になってきたことは、・真実は隠されるのだ・国は国民を守らないのだ・事故はいまだに終わらないのだ・福島県民は核の実験材料にされるのだ・ばくだいな放射性のゴミは残るのだ・大きな犠牲の上になお、原発を推進しようとする勢力があるのだ・私たちは棄てられたのだ
私たちは疲れとやりきれない悲しみに深いため息をつきます。でも口をついて出てくる言葉は、「私たちをばかにするな」「私たちの命を奪うな」です。福島県民は今、怒りと悲しみの中から静かに立ち上がっています。
・子どもたちを守ろうと、母親が、父親が、おばあちゃんが、おじいちゃんが・・・自分たちの未来を奪われまいと若い世代が・・・・大量の被曝にさらされながら、事故処理にたずさわる原発従事者を助けようと、労働者たちが・・・・土を汚された絶望の中から農民たちが・・・・放射能によるあらたな差別と分断を生むまいと、障害を持った人々が・・・・ひとりひとりの市民が・・・
国と東電の責任を問い続けています。そして、原発はもういらないと声をあげています。私たちは今、静かに怒りを燃やす東北の鬼です。
私たち福島県民は、故郷を離れる者も、福島の地にとどまり生きる者も、苦悩と責任と希望を分かち合い、支えあって生きていこうと思っています。
私たちとつながってください。私たちが起こしているアクションに注目してください。
政府交渉、疎開裁判、避難、保養、除染、測定、原発・放射能についての学び。そして、どこにでも出かけ、福島を語ります。今日は遠くニューヨークでスピーチをしている仲間もいます。思いつく限りのあらゆることに取り組んでいます。
私たちを助けてください。どうか福島を忘れないでください。
もうひとつ、お話したいことがあります。それは私たち自身の生き方・暮らし方です。
私たちは、なにげなく差し込むコンセントのむこう側の世界を、想像しなければなりません。便利さや発展が、差別と犠牲の上に成り立っている事に思いをはせなければなりません。原発はその向こうにあるのです。
人類は、地球に生きるただ一種類の生き物にすぎません。自らの種族の未来を奪う生き物がほかにいるでしょうか。私はこの地球という美しい星と調和したまっとうな生き物として生きたいです。ささやかでも、エネルギーを大事に使い、工夫に満ちた、豊かで創造的な暮らしを紡いでいきたいです。
どうしたら原発と対極にある新しい世界を作っていけるのか。誰にも明確な答えはわかりません。できうることは、誰かが決めた事に従うのではなく、ひとりひとりが、本当に、本当に、本気で、自分の頭で考え、確かに目を見開き、自分ができることを決断し、行動することだと思うのです。
ひとりひとりにその力があることを思いだしましょう。
私たちは誰でも変わる勇気を持っています。奪われてきた自信を取り戻しましょう。そして、つながること。
原発をなお進めようとする力が、垂直にそびえる壁ならば、限りなく横にひろがり、つながり続けていくことが、私たちの力です。 たったいま、隣にいる人と、そっと手をつないでみてください。見つめあい、互いのつらさを聞きあいましょう。怒りと涙を許しあいましょう。今つないでいるその手のぬくもりを、日本中に、世界中に広げていきましょう。
私たちひとりひとりの、背負っていかなくてはならない荷物が途方もなく重く、道のりがどんなに過酷であっても、目をそらさずに支えあい、軽やかにほがらかに生き延びていきましょう。
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