ブラジルの「市民ベーシックインカム法」の邦訳

BIメールニュースの読者の方からブラジルの「市民ベーシックインカム法」の邦訳を、法律の条文に沿った形で頂きました。

「VOL 2」でも既存の翻訳があるようですが、私たちの方でもより一層充実した周辺事項の研究も含めた翻訳を進めていければと思います。

2004年1月8日法律第10835号

2004年1月9日官報掲載

市民基本所得及びその他の関連措置を制定する。

国会が次の法律を制定し、私共和国大統領がこれを承認することを、ここに公示する。

第1条 市民基本所得は、2005年から施行することとする。この制度は、国内に居住する全ての国民及び最低5年以上国内に居住している全ての外国人が、その社会経済的状況に関わらず、毎年金銭的給付を受領することができる権利によって構成されるものとする。

  1. 本条冒頭文の規定の適用に当たっては、行政府の裁量により、より貧困度の高い階層の住民を優先しつつ、段階的に達成されなければならないものとする。
  2. 給付の支給は、全ての者に同等な額で実施されなければならないこととする。又、国家の発展程度及び予算上の支出可能性を検討した上で各人の食糧、教育及び健康維持に要する最低限の支出額に対して十分な額でなければならないものとする。
  3. 給付の支給は、同額に分割し、月毎に行うことができることとする。
  4. 本条冒頭文の金銭的給付は、個人所得税の課税目的においては、非課税所得とみなされるものとする。

第2条 給付の支給額の決定は、財政責任法(2000年5月4日補足法第101号)第16条及び第17条の規定の厳守のもと、行政府の裁量で行われることとする。

第3条 行政府は、前条の規定を遵守しつつ、本計画の第一段階の実施の為に十分な予算措置を2005会計年度連邦予算に計上することとする。

第4条 2005会計年度以降は、複数年次計画及び予算指針関連法案内においても、この計画の実施のために必要と認められる諸措置における扱い同様に、支出の取消や移転支出について指定しなければならない。

第5条 この法律は、公布の日から施行する。

ブラジリア

2004年1月8日(独立183周年、議会開設116周年)

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ

法律原文 http://www.trt02.gov.br/geral/tribunal2/Legis/Leis/10835_04.html

BIメールニュースNo.08.  2011.1.29発行 バックナンバー

BIメールニュースNo.083  2011.1.29発行

【1】もし電子書籍ができたら

ベーシックインカム・実現を探る会 主任研究員  古山 明男

【2】市民が主体のベーシックインカム井戸端会議(仮称)

【3】BIニュース  ワシントン州議会、ワシントン投資信託(WIT)を設立する法案を提出

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私たち「ベーシックインカム・実現を探る会」は、政治的に中立の立場で、「すべての個人への無条件な所得の保証」というベーシックインカムを実現につなげる提言を発信します。

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【1】もし電子書籍ができたら

ベーシックインカム・実現を探る会 主任研究員  古山 明男

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ベーシック・インカム(以下BI)が必要になるもっとも大きな要因は、科学技術の進歩であると思う。

最近の身近な技術革新の中に、考えさせられる例がある。電子書籍である。電子書籍が普及すると、雑誌や書籍が情報化され、「本を買う」ことは「内容をダウンロードする」ことになる。すべての本が電子化することはないだろうが、かなりの本が置き換わるだろう。

消費者にとってはありがたい。本は安くなるであろう。本の品切れもなくなるし、置き場所に困ることもなくなる。 しかし、電子書籍化で失業者がでる。印刷業界の仕事はかなり減るだろう。製本業界は大打撃を受けるだろう。製紙業にもかなりの影響がでるだろう。書店も減るであろう。

電子書籍機器の製造・販売、システムの維持などで増える雇用もある。しかし、失われる雇用の方が大きいだろう。電子書籍は、現在の電器メーカーと情報産業がちょっと手を広げるだけですむからである。 支払われる人件費の総額は減る。出版界全体としての売上げも減るし、GDPも減る。

技術が進歩したために、人間の労働が不要になり、失業者が出る。これは、産業革命以来の問題である。多くの人が、技術の進歩と機械の発達に疑問の目を向けた。しかし、機械に目をとられ、所得=賃金であることは疑われてこなかった。

資源を浪費しないことと、人間を貶めない労働で生産をできるのはよいことではないか。それが科学技術の成果である。しかし、いかなる社会体制であれ、人間が賃金によってしか収入を得られないなら、人間の仕事を減らす機械は、人間の敵になるであろう。生活できない人がたくさんできる。その問題を解決するのがBIである。科学技術と人間が共存するには、BIが必要である。

だれでも生活できるように完全雇用を目指すというのが、従来の考え方である。完全雇用を実現するため社会主義国は企業を国有化したが、非効率で自発性のない労働がはびこり、国全体が倒産した。資本主義国は、効率追求を優先させるが、失業者をたくさん生み出し、完全雇用には程遠い。

BIは文明史的な意義を持っている。技術の進歩によって解放された労働力を、自由にいかなる領域に振り向けることも可能になるからである。BIによってはじめて、我々は科学技術の果実を、社会にもたらすことができるであろう。

<古山明男 氏 プロフィール>

古山教育研究所を主宰 http://www.asahi-net.or.jp/~ru2a-frym/

ブログ「変えよう!日本の学校システム」は多くの支持を受けています。 http://educa.cocolog-nifty.com/blog/

2009年7月12日の当会主催の勉強会で「ベーシック・インカムのある社会」を講演。講演録 http://bijp.net/transcript/article/91http://bijp.net/transcript/article/98

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【2】BIニュース  ワシントン州議会、ワシントン投資信託(WIT)を設立する法案を提出 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ワシントン州議会は1月18日に、上下院両院で、農業や教育、コミュニティや経済の発展、住宅、そして企業の成長を促進することを主旨とする、ワシントン投資信託(Washington Investment Trust, WIT)を設立する法案が提出されました。 http://tinyurl.com/499lbwqhttp://tinyurl.com/4qcjok7
HOUSE BILL 1320(下院で提出された法案、PDFファイル) http://apps.leg.wa.gov/documents/billdocs/2011-12/Pdf/Bills/House%20Bills/1320.pdfSENATE BILL 5238(上院で提出された法案、PDFファイル) http://apps.leg.wa.gov/documents/billdocs/2011-12/Pdf/Bills/Senate%20Bills/5238.pdf
もしこの法案が可決されれば、従来バンク・オブ・アメリカから預託されていた基金を、州独自で保証することになり、この内容は、イリノイ、バージニア、メリーランド、ハワイ、マサチューセッツ、フロリダ、ミシガン、オレゴン、カリフォルニア等の各州で研究・提案されている州立銀行に関する法案と似ています。

下記の記事に、ワシントン州がノースダコタ銀行の総裁に、州立銀行の機能について問い合わせていた主旨がありましたが、素早く法案提出へと動いた形になっています。今後も、この動向に注目していきたいと思います。

http://trans-aid.jp/viewer/?id=13453http://www.huffingtonpost.com/2010/02/16/bank-of-north-dakotasocia_n_463522.html

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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※     発行 : ベーシックインカム・実現を探る会、編集長:野末雅寛 http://bijp.net/ http://twitter.com/bi_jpCopyright(C)2009-ベーシックインカム・実現を探る会-All rights reserved.※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※